毎日新聞で3月1日より連載を開始した芥川賞作家・平野啓一郎氏の新連載『マチネの終わりに』が、cakesでもスタート! 『空白を満たしなさい』以来、三年ぶりの長篇となる本作のテーマは「恋愛」。文明と文化、喧噪と静寂、生と死、更には40代の困難、父と娘、《ヴェニスに死す》症候群、リルケの詩……など、硬軟、大小様々なテーマが折り重なり合い、大きな危機をはらんだ大人のラブストーリーが綴られます。
「それでは、今日のマチネの終わりに、みなさんのためにもう一曲、この特別な曲を演奏します。」
洋子はニューヨークで開催された蒔野のコンサートの客席にいた。 蒔野は洋子が来ていることを知らない。 そして、開演の時刻がせまりー……。
ロンドンで、洋子の姿を一度テレビで見た蒔野は以来彼女との再会を願うようになった。 早苗と娘・優希の存在の肯定する一方、リサイタルで訪れたNYで洋子の姿を探そうとしてしまう……。
二〇十一年三月十一日のあの地震を、洋子はジュネーヴにいながら知った。 蒔野と洋子の人生は、彼らの知らないところで再び交差しようとしているー……。
洋子とのあの別れは、現在の妻である早苗の仕業であった。生まれた娘を見ながら、蒔野は早苗を許すべきだと考えるがー…。 そして、三月十一日、あの日が訪れる。
父であるソリッチとの再会の際に、洋子はずっと疑問に抱いていたことを問いかける。 洋子の母と離婚をした後、次の映画を撮影するまでの空白の九年間、彼は何をしていたのかー……?
洋子は新たな勤務地であるジュネーヴへ発つ前に、父親である映画監督イェルコ・ソリッチに会いに行く。 そこには娘を心配をする父親の姿があったー…。
蒔野との2年前の別れの原因は、早苗にあることが知ってしまった洋子。 日本より戻った彼女はある決断をし、ニューヨークを離れることとなるー…。
蒔野は洋子との共通の友人である是永との会合で、3年前の洋子との別れの日の違和感を思い出す。 そして、時期を同じくして早苗が蒔野にある告白をするー……。
突然の武知の訃報は、蒔野の心に衝撃と、深い悲しみを与えた。 そして一方で、早苗の心にも大きな動揺を感じていたー……。
蒔野とのコンサートの後、引退を決めた武知。 蒔野は彼の決断を受け入れた。しかし、数ヶ月後に届いたのは思わぬ知らせだったー……。
武知とのコンサートは成功のうちに終了した。 しかし、コンサートの打ち上げの日の夜、武知が蒔野に打ち明けたことは…。
1975年愛知県蒲郡市生。北九州市出身。小説家。京都大学法学部卒。1999年在学中に文芸誌「新潮」に投稿した『日蝕』により第120回芥川賞を受賞。以後、数々の作品を発表し、各国で翻訳紹介されている。2004年には、文化庁の「文化交流使」として一年間、パリに滞在。 著書に、小説『葬送』『滴り落ちる時計たちの波紋』『決壊』(芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞)『ドーン』(ドゥマゴ文学賞受賞)『かたちだけの愛』『空白を満たしなさい』『透明な迷宮』『マチネの終わりに』(渡辺淳一文学賞受賞)『ある男』(読売文学賞受賞)、エッセイ・対談集に『私とは何か 「個人」から「分人」へ』『「生命力」の行方~変わりゆく世界と分人主義』『考える葦』等がある。 webサイト:HIRANO KEIICHIRO official website Twitter:@hiranok Facebook:http://www.facebook.com/hiranokf/