モテる男は、よりモテる
——『ぼくは愛を証明しようと思う。』を読んでいるような層は恋愛に積極的だと思うのですが、藤沢さんも以前のインタビューでお話しされてましたが、現代日本において、男性の恋愛への意欲は下がっているわけですよね。
藤沢数希(以下、藤沢) それは、二村さんのような人たちが、クオリティの高いAVをたくさん世に送り出しているからですよね(笑)。
二村ヒトシ(以下、二村) 褒められている……(笑)。
藤沢 マクロに見ると、男性の性欲の総量って、基本的に一定だと思うんですよ。時代によらずね。今はポルノの質も上がって、量も爆発的に増えたから、性欲はそういうもので解消されてしまう。男性は、それとは別に恋愛的なものも必要かもしれませんが、日本は、キャバクラやAKB48のような疑似恋愛を楽しむためのものもたくさんある。
逆に言うと、こういうオルタナティブな性欲や恋愛欲の発散のためのサービスが高度に発達しているからこそ、イスラム圏のように、性に関して極端な格差社会になりつつある日本でも、非モテ男性たちが暴動を起こさず、平和な社会がつくられているとも言えるんですね。それは二村さんたちの功績ですよね。
二村 ありがとうございます(笑)。
藤沢 現代社会では、モテ側の男性って、男性全体の上位1、2割もいないんですよね。女の人が恋愛対象として見ているのは、せいぜい上位3割ぐらいまでで、下の方は視界にすら入っていないんですよ。
二村 それ以下の、7割の男は女性の眼中にないと。
藤沢 だから、周りの女性に空気のように扱われるよりも、ポルノやAKBといった代替コンテンツの方がいい、と思っても仕方がないですよね。しかも、日本はアニメなどの2次元の世界も発達していますから、世界の中でも特に男性の草食化がひどい状況になっています。
二村 たしかにAVの表現技術や女優さんのレベルの上昇は、ここ10年は特に著しいです。生身の恋愛市場にトドメを刺しちゃったのかもしれないというのは感じていました。
藤沢 男性の恋愛って、スキルが重要になるじゃないですか。それなのに、一旦、オルタナティブなものにハマってしまうと、リアルでの恋愛経験がまったく積めなくて、どんどん非モテ化が進むんですよ。そして、一部のモテる人たちだけが経験値を積み上げ、さらにモテるようになっていく。
恋愛工学の言葉で言えば、女性は、“Good Genes”を持っている男に引かれる性質があるのですが、女性がその“Good Genes”を見極めるために一番重要なことは実績、つまり、すでに他の女にモテているかどうか、ということなんですよ。
だから、「モテる男がよりモテる」という、恐ろしいことが起こり、恋愛市場は格差が加速するような仕組みがビルトインされているのです。
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