後から振り返ってみると、まるで何かに導かれていたかのような気がするときがある。すべてのことがあらかじめ決まってきたかのような……。僕のセブ行きは、まさしくそんなふうに進んでいったのだ。
マレーシアから日本に帰った僕は、再び講演を数件こなした。ある地方都市で講演会場を貸してくださったYさんが、なんと、フィリピン語学学校の日本法人側を運営をしている方だったのだ。講演の後に食事に行き、詳しく話を聞いた。漠然と想像していたことにだんだんと肉がついていく感じ。森山さん、大石さん、友人の息子、そしてこのYさん。不思議な巡り合わせが続いていく。
Yさんの話で最も印象に残ったのは、「フィリピンでの起業は、信頼できるパートナーがいないと成立しない」という一言だった。確かにその通りだろう。まして僕は拠点がアメリカなのだ。よほど信頼できるパートナーに巡り合わない限り、空中分解は必至に違いない。でも、考えていたってコトは始まらない。
僕はとりあえず、情報収集を始めてみることにした。幸い、セブ島には一人だけ知り合いがいた。顔の広い人なので、なにかとっかかりができるかもしれない。あまり期待しないようにと自分に言い聞かせながら、連絡を取ってみた。フィリピンでの語学学校設立を検討していること、そして信頼できるパートナーを探していることなどなどを話してみる。すると意外な返事が返ってきた。
「実は松井さんと同じように、パートナーを探している人がいます。」
「どんな方なんですか?」
「大阪で不動産屋さんを営まれている方です。」
「大阪の不動産屋さん?」
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