メディアによる自主規制と「公共の利益」
前回まで、犯罪者がその犯罪をもとにした出版などによって利益を得ることについてのイギリスでの法律的な規制をお話してきましたが、イギリスでは、メディアによる規制もあります。
まず、出版メディアは自主規制を実施しています。出版社、雑誌社、新聞社、広告代理店、ジャーナリスト個人は、犯罪者に対して、出版による対価を支払うことを禁止する倫理規定で縛られています。
メディアの規制団体であるThe Independent Press Standards Organisation (IPSO)が公開している「編集者倫理規定」(Editors' Code of Practice)を見てみましょう。その第16項は、犯罪者に対する支払いを禁止しています。
*Clause 16 Payment to criminals
i) Payment or offers of payment for stories, pictures or information, which seek to exploit a particular crime or to glorify or glamorise crime in general, must not be made directly or via agents to convicted or confessed criminals or to their associates - who may include family, friends and colleagues.
ii) Editors invoking the public interest to justify payment or offers would need to demonstrate that there was good reason to believe the public interest would be served. If, despite payment, no public interest emerged, then the material should not be published.
第16項 犯罪者への支払い
特定の犯罪を使用、もしくは、犯罪一般を讃える、もしくは美化するために、ストーリー、写真、情報に対して、受刑中もしくは自白した犯罪者もしくはその関係者(家族、友人、同僚含む)へ、直接もしくは代理人経由で金銭を支払ってはならない 「公共の利益」の名の下で犯罪者に対する金銭の支払を正当化する編集者は、「公共の利益」にあたいるすことを証明しなければならない。しかしながら、もし、その金銭支払が「公共の利益」にあたいしない場合は、その素材は出版されるべきではない。
テレビ局およびラジオ局は、国から放送免許を得て営業しているため、通信および放送の規制監督官庁である規制団体であるイギリス通信庁(the Office of Communication :OFCOM)の規制に沿って放送をしなければなりません。この規制には法的強制力があります。
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