《SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー》第2弾、『時間SF傑作選 ここがウィネトカなら、きみはジュディ』(以下『ウィネトカ』と略)の発売を記念して、今月は、海外の時間SF名作短篇総まくりをお届けする。まずは、日本語で読める時間SF傑作選の収録作から。
新刊の『ウィネトカ』は全13篇を収録。本邦初訳は、イアン・ワトスン&ロベルト・クアリアの09年英国SF協会賞受賞作「彼らの生涯の最愛の時」(前代未聞のマクドナルド時間旅行ロマンス)、リチャード・A・ルポフ「12:01PM」(二度も映像化されている時間ループものの有名短篇)、47年発表のH・ビーム・パイパー「いまひとたびの」(中年男の意識が少年時代の自分の肉体に戻る『リプレイ』型の元祖)の3本。書籍初収録が、テッド・チャンのヒューゴー賞、ネビュラ賞、星雲賞受賞作「商人と錬金術師の門」と、シルヴァーバーグ「世界の終わりを見にいったとき」、エフィンジャー「時の鳥」、ワトスン「夕方、はやく」の4本。とうの昔に邦訳が品切になった年度別SF傑作選に収録されている折り紙つきの名作が、ボブ・ショウ「去りにし日々の光」とデイヴィッド・I・マッスン「旅人の憩い」。現行本との重複を承知で選んだのがプリースト「限りなき夏」とスタージョン「昨日は月曜日だった」。『ウィネトカ』のお手本でもある伊藤典夫・浅倉久志編『時間SFコレクション タイム・トラベラー』(87年刊/新潮文庫)との重複が、ソムトウ・スチャリトクル「しばし天の祝福より遠ざかり……」とF・M・バズビイ「ここがウィネトカなら、きみはジュディ」の2本。
『時間SF傑作選 ここがウィネトカなら、きみはジュディ』(ハヤカワ文庫SF)
では、その『タイム・トラベラー』には他に何が入っているかというと、シルヴァーバーグ「時間層の中の針」、シェフィールド「遥かなる賭け」、スターリング&シャイナー「ミラーグラスのモーツァルト」、ライバー「若くならない男」、チェリイ「カッサンドラ」、ハーネス「時間の罠」、ナイト「アイ・シー・ユー」、レイク「逆行する時間」、ラファティ「太古の殻にくるまれて」、ファーマー「わが内なる廃虚の断章」、ワトスン「バビロンの記憶」で、こちらも全13篇。
昨年10月に出た中村融編『時の娘 ロマンティック時間SF傑作選』(創元SF文庫)は、W・M・リー「チャリティのことづて」、ナイト「むかしをいまに」、フィニイ「台詞指導」、シラス「かえりみれば」、ファイラー「時のいたみ」、ヤング「時が新しかったころ」、ハーネス「時の娘」、ムーア「出会いのとき巡りきて」、グリーン・ジュニア「インキーに詫びる」の9篇。
以上3冊を読むだけでも、英米の時間SF短篇の有名どころはかなりカバーできるが、さすがに数が足りない。そこで、ツイッター上で時間SF短篇オールタイムベスト3のアンケートを急遽実施した。66人の投票結果をざっと集計した結果は、以下の通り(短篇タイトルのあとの括弧内は収録書籍名。“同”は、“短篇と同一タイトル”の意。版元表記がないものはハヤカワ文庫刊。“創元”は創元推理文庫/創元SF文庫を意味する)。