『信頼関係とは“変わらないふたりの間”に生まれるものです。浅井さんは真実を確かめもせず、草加くんへの態度を変えました。しかし彼は何も変えていない』
ツイッターが草加ではなかったことを知った美沙は、自らが草加との信頼関係を断つ原因となっていたことを坂井に諭された。
美沙は会議室を飛び出すと駆け足で自席へと向かった。草加の姿は——あった。
「浅井さん、今日は遅いんっすね」
「うん。坂井部長と話してた。その……草加くんがツイッターの出元じゃないって知って…ごめんなさい!」
美沙は心のかぎり頭を下げた。そして、ギュっと目をつぶった。
「浅井さんって、マジ単純。もういいっすよ。頭あげてください」
草加の言葉を受け美沙はようやく頭を上げ、乱れた髪の毛に手をかけた。草加の目が潤むのを見たのは、今日2回目。
“単純”と呼ばれても、悪い気はしなかった。強固な信頼が、ふたりの間に結ばれたのを感じたからだ。
美沙は頬をつたう涙もそのままに、会社をあとにした。
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