事務所の近くに部屋を借りて、四六時中ジブリの鈴木さんと一緒にいた
—— 『コンテンツの秘密』、発売してすぐに拝読しました。この本、すごいことがたくさん書いてありますよね。
川上量生(以下、川上) おもしろいでしょ? この本。
—— ほんとに、ものすごくおもしろかったです。
川上 おもしろいんですよ、はっきり言って(笑)。だからね、いろんな人に読んでもらいたいんです。
—— ですね。ということで、内容についてさっそくうがかっていきたいと思います。「はじめに」では、川上さんがジブリの鈴木敏夫プロデューサーに弟子入りして、どういう生活をしていたのかが描かれています。何年くらい、ジブリに通っていたんですか?
川上 毎日通っていたのは2年くらいですね。
—— 当時は鈴木さんの事務所「れんが屋」の近くに部屋まで借りていたと知って、びっくりしました。
川上 そうそう、鈴木さんにつきあってると、とにかく夜が遅くなるんですよ。0時前に帰れることなんて、ほとんどなかった。それで仕方なく(笑)。ぼくが通っていた頃はそれでもまだ早くなったほうで、全盛期には2時、3時まで事務所にいるのが当たり前だったみたいです。
—— 仕事が終わってからも、鈴木さんと「れんが屋」で映画鑑賞をしたり雑談したりしていたと書かれていますね。
川上 打ち合わせとかをしていると、鈴木さんがよくなにかの映画を引用するんですよね。今話しているテーマについては、この映画のこのシーンが……と説明するんだけど、みんなよくわからないと。そうしたら、「いっぺん観てみましょう」とか言って、まるまる1本観ちゃうんです。
—— そしたらすぐに2時間とか……。
川上 経ちますよね。なんなら、さらにもう1本見たりしますからね。夜も遅くなるわけですよ。ぼくは、鈴木さんに弟子入りするまで映画ってほとんど観たことがなかったから、そうやって映画を何本も観ること自体が新鮮でした。
—— いまはもう、ジブリには通っていないんですか?
川上 毎週月曜に子どもをジブリ保育園に送ってるので、月曜はジブリにいますよ。
—— おお、保育園の送り迎えをされてるんですね。
川上 そう、ぼくは自分で「子どもの送り迎えをしてるんだ!」って思ってたんです。そうしたらね、このあいだ「送り迎えしてるのは鈴木さんでしょ」ってみんなに言われたんですよ。じつは、月曜は鈴木さんがぼくの家まで車で迎えに来てくれて、その車に乗って娘と一緒にジブリに行くんです(笑)。
—— それは……鈴木さんに送り迎えしてもらってる、ですね(笑)。
川上 我ながらひどいですよね(笑)。
コンテンツは現実の模倣であり、人間はそれを本能的に喜ぶ
—— そして、第1章では「コンテンツとはなんなのか」を説明するために、アリストテレスの『詩学』を引用されているところがおもしろいですよね。そこまでさかのぼるのかと(笑)。
川上 アリストテレスって、ほんとすごい人ですよね! 頭がいい。
—— なんだか、大昔から言われてきたことを再確認しているようですが……(笑)。どういうきっかけで『詩学』を読まれたんですか?
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