思考のコントロール訓練
人間は、常に何かを考えている。これは諸刃の剣であり、幸福にも災いにも転ぶ。思考が状況を正しくとらえていることもあるが、そうでない場合が非常に多いのだ。
そして、無意識のうちに考えている時間が圧倒的だ。私たちの思考は、単語、アイデア、文章として、果てしなく流れ続けている。スポーツ解説者さながらに、自分の人生の概要報告を、間断なく流している。一秒たりともストップして、コメントの内容や強調するべき箇所、言葉選びの指摘を受けることがないのだ。
複数の研究によると、平均的な人間の頭のなかには、一日に一万語以上の語句・文章がめぐっているそうだ。それが、この章のテーマである「心のつぶやき」だ。
たいていの人は、「思考はコントロールできる」という事実に、言われるまで気づかない。当たり前のことなのに、忘れているのだ。あなたが今、脅迫に遭っていたり、身の危険にさらされているなら別だが、安全な環境にいるなら、たいていの人は、考える内容を自分で決めることができる。
これは実は、すばらしいことなのだ。思考のコントロールを訓練すれば、かなりの程度まで、感情までも操作できるようになるからだ。「すること」「しないこと」を決めるのは感情だ。だから、自分の行動の舵取りができるようになる。
楽しくて楽な仕事を、骨が折れる仕事より優先するのはたやすい。この判断を調整するのは、あなたの思考と感情である。やる気があり、刺激を受け、熱心に取り組んでいる、と感情が認識すれば、自動的に、必要以上の仕事ができるのだ。