「定時に帰社させてくれなさそうな有名人」松岡修造
「理想の上司」アンケートの男性1位が松岡修造という事実は、この手のアンケートがいかに実態に即していないかを教えてくれる。「上司になったら定時に帰社させてくれなさそうな有名人」というアンケートがあれば、私は票を買収してでも彼に投じるように仕向けるが、こういったアンケート結果を前に現実的な議論に持ち込むと、「まぁまぁアンケートなんだしさ」とすぐさまなだめられてしまう。「理想の上司」女性1位を6年連続で守り続ける天海祐希が、何だかんだで旧態依然とした役員サイドに迎合したら、部下の何人かは退社を心に決めると思うのだが、「どう思う?」と問い詰めても、「まぁまぁアンケートなんだしさ」と再びなだめられる。「上司として尊敬していたのに何だかんだで経営側のコマになりそうな有名人」というアンケートも必要だろう。誰に投票するかは未定だが、私は票を再び買収する。
今、とにかく無節操に「セクシー」との声を浴びる斎藤工は、「セクシーって結構、適当な言葉だと思ってて……」(『情熱大陸』)と、自分に向かう「セクシー」を分析している。自分が直接的にどのように見られているかを自分の感覚で捉え直し、そんなものは間接的な印象にすぎないと差し戻しているのである。イメージなんてその程度のものだという感覚を維持できているからこそ、「セクシー」「フェロモン」「抱かれたい」方面の言葉を悠々と引き受けるのである。
「こう見えて自分……」とイメージを転回させない
みなさん、テレビの前で耳をそばだてて欲しいのだが、素の表情を捉えようとする密着映像のカメラに向かって「こう見えて私……」「こう見えて自分……」と自ら前置きする人がいる。そうやって前置きして、一人カラオケに行ったり赤提灯の飲み屋に行ったりする意外性が強調される。これを素直に「意外!」と思ってはいけない。松岡修造が実際に上司になった時のことが事細かに議論されないように、こちらが投げるイメージなんて所詮イメージどまりなのだから、ならば、こちらのイメージをうまいこと利用する「こう見えて……」に頷いてはいけない。それこそ実態に即していないのだから。斎藤工という人は、イメージが所詮イメージどまりであることを熟知している人。だから、「こう見えて自分……」とは強調しない。
世から放たれる「セクシー」を素直に引き受け続ける壇蜜にしろ斎藤工にしろ、「自分なんてすぐに消費されますよ、ブームなんて今だけですよ」とネガティブに繰り返す。二人ともセクシーの成分から不倫臭が漂ってくるが、壇蜜が「殿方さま……」と自らその臭いを強める一方で、斎藤は自ら強めようとはしない。ただただそういう役でブレイクしたから、流されるままにその臭いを維持しているだけなのだ。「こう見えて自分……」と転回させることもしないので、安手の「セクシー」がどんどん積もり積もっていく。
自分がどう見られるべきかについて、業界っぽい煩悶がない
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