55歳になっても恋愛をつづけられるのは……
現在55歳のジェリーと初めて会ったのは、彼がまだ30代後半だった18年前だ。
森に囲まれたわが家は、定期的に害虫駆除をしないと家を破壊するシロアリや怖い病気を運ぶネズミの巣窟になるらしい。そう忠告してくれた建築関係者から紹介してもらったのが、害虫駆除会社の経営者ジェリーだった。
ジェリーは年に2回やってきて、仕事が終わるとわが家のキッチンでお茶を飲みながらお喋りする。互いに年は取ったが、話題はいつもジェリーの恋愛、恋人問題だ。同棲しているガールフレンドとの諍い、別れ、寄り戻し、決別、新しい出会い……と、最終回がない連続テレビドラマのようだ。
いつも、ジェリーの悩みに耳を傾け、相槌をうち、なだめ、励ますのが私の役割である。仕事よりもお茶の時間のほうが長いので、夫からは「カウンセリング代として害虫駆除代を帳消しにしてもらったら?」と冗談を言われている。
彼はずっと独身だが、感心するのは、何度ハートブレイクしても新しい恋や出会いを諦めないところだ。
12、3年前のことだ。ジェリーは仕事を終えてキッチンに入るやいなや、仕事中の私のラップトップコンピュータを指さした。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。