開沼博(以下、開沼) あの、ちょっと気になってることがあるんですが、聞いてもいいですか?
上野千鶴子(以下、上野) どうぞ。
開沼 上野さん、足、どうかされたんですか? なんかサポーターしてらっしゃいますね。
上野 スキーで転びました。よたよたと会場に入ってきたのはね、開沼さんが若くて私がババアだってだけじゃないんですよ(笑)。私、いま膝を故障しておりまして。
開沼 それは大変ですね。しかしお元気な(笑)。
上野 以前、骨折した時に、某所で松葉杖ついてたら「どうしたんですか」って聞かれて、「スキーで転んで」って言ったら「いやー、お年ですし大変ですね」って話になって。
開沼 ほう。
上野 それが、どうも話がかみ合わないなと思ってたら、向こうの人は私が「敷居(シキイ)で転んで」って言ったと聞き間違えてたらしくて。
開沼 なるほど、大違いじゃないですか(笑)。そちらのほうがご年齢にふさわしいのかも知れない。
上野 懲りずにまた大転倒をしましてこの状態なんですが、本日は開沼さんの『はじめての福島学』のお話ですから来ないわけにはいかないと思ってまいりました。
開沼 ありがとうございます。
福島学が他のご当地学と違うところ
上野 開沼さん、やはりタイトルが気になるのだけれど「福島学」が他のご当地学と違うところはどこですか?
開沼 やはり原発被災という未曾有の災害・危機を取り扱っている点が大きいと思っています。そこに重きを置いて、「数字」と「言葉」の往復をしながら3・11を経験した福島についてまとめています。
上野 それだと福島というくくりは大きすぎませんか? 被災の度合いは地域差が大きいから、もう少し個別にみていかないとその違いがわからないのでは?
開沼 ええ、上野先生のご指摘通り、そうした理由から、例えば、福島を「いわき学」とか、「双葉学」などのように地域別にわけてみていこうという議論もあります。
上野 急に「先生」って言わなくていいわよ。
(会場笑)
開沼 あ、つい(笑)。この場なんで、いまは無理して「上野さん」って言っているんですが、裏では「上野先生」といつも言っているもので。
上野 今は社会学者として同業ですから。
開沼 はい、それで上野さんの提案の他にもこの学問の名前に関しては様々な意見がありますね。僕が関西の講演でいわき市出身の学生から提案されたのは「3・11学」でした。
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