「なめらかな社会」は実現できそうですか?
Q.パーソナライズされたニュースばかりが届けられると、情報が自分の興味があるものだけに情報が偏ってしまうおそれがあるという議論もよくされていますよね。その辺についてはどう考えていますか?
鈴木:自分の周りの話題だけにしか興味を示さなくなってしまうという問題はたしかにあって、いわゆる「フィルターバブル」と言われているものです。情報をパーソナライズすればするほど人の興味は狭く深くなり、それによって民主主義の基盤が脅かされ、対話ができない社会になってしまうと、「フィルターバブル」という言葉をつくったイーライ・パリサーなどは言っています。現在の「SmartNews」では、ジェネラルニュースを配信することで、その危険性を回避しているところがあります。自分の周りのことにしか興味がない人も、地球の裏側のことにしか興味がない人もどちらも不健全だと思うのですが、人々は概して二元論が大好きなので、極端になりがちですよね。それをなくすためにどうすれば良いかということは常に考えていますし、両者をなめらかにつなげられる環境をつくっていく必要があると思っています。
Q.以前に「SmartNews」さんのオフィスで、数学者の森田真生さんによるアラン・チューリングに関するレクチャーを聞かせてもらったのですが、チューリングは哲学的な問いを数学的なモデルにして、それを解いていくことで抽象的な問題を考えていくという話があって、それがとても腑に落ちたんです。「SmartNews」にもそれに近い考え方があるように感じていて、「なめらかな社会」の実現を、ニュース配信という形で目指していることがとても興味深いと思います。
鈴木:本というのは、哲学のフォーマットのひとつですが、普及したのはここ数千年間の話で、それ以前から人類は哲学をしていたはずですよね。宇宙のことや自分たちの存在のことなどを考えながら、人類は歌ったり、祈ったり、踊ったりと色んな行為で哲学をしてきたわけで、現在に置き換えればプログラミングを書いたり、会社をつくったり、数学をしたりすることも哲学のフォーマットになり得ると考えています。
Q.同時に、そういうレクチャーが受けられる環境が社内にあるということも素晴らしいと感じました。