「明日の戦闘員、よろしくお願いします!」
── 前回は、アクション事務所の養成所のことなどをお聞きしましたが、新人時代、経済的にはどうでした?
人見早苗(以下、人見) 戦隊モノの“キャラクター”をやらせてもらったときは1年間(出演が)続くので、生活に困るということはなかったですが、養成所を卒業してから何ヶ月かは休みが続いたりして、だいぶ収入に波がありました。
キャラクターが決まってからは、先輩方のお付きをしたりする「補助」の仕事や、“戦闘員”の仕事をほぼ毎日入れて頂いていました。撮影現場に慣れるように、ということもあったと思います。
── レギュラーをもっていないひとは、普段はどうしているんですか?
人見 若手ですと、だいたい補助か、戦闘員が多いと思います。「明日、◯◯さん戦闘員お願いします」という電話を事務所からもらって現場に入ります。
たまに、“怪人”に街を荒らされて逃げまどうエキストラ的な役などもあります。そういうシーンでハデに転んだりしてるのを見かけられたら、だいたいアクションマンですね(笑)。
新人時代は、ともかく倹約生活が基本。スーツアクターの世界を描いた映画(唐沢寿明主演、武正晴監督)を観たとき、若い俳優が余ったロケ弁当を持ち帰る場面が出てきて、リアルだったと笑う。
── アクションの仕事は、ケガとかつきものだと思うんですが、ケアとか保険関係はどうなんですか?
人見 仕事中のケガは労災が下りますが、練習中は出ないんです。でも、技の稽古をしているとムチャなこともするので、実際は練習中のときがいちばんケガしやすくて。
── もしケガをしたりすると?
人見 一時期休んで、その間はバイトしたりして……。
事務所にいた頃は労災保険に入っていたからよかったんですが、フリーだとそういう掛け金も自分で払わないといけなくて。「どの保険がいい?」と仲間と話したりもしますね。
「顔」は映らないが、「個性」を出そうと工夫する
── スーツアクターのひとは顔が出ないわけですから、誰が「なか」に入っているのか、識別しにくいように思うんですが。同業者だと見分けられるものなんですか?
人見 わかるみたいですね。それぞれにクセがあって、アクションとか芝居のキレだとかで。わたしも「あれ、人見ちゃんっぽいよね」と言われたりすることがありました(笑)。
── 演じる際に「個性」は意識するものですか。
人見 自分の場合は、姿勢を意識していましたね。比較にならないですが、よく「(仮面)ライダー」をやられている高岩成二さん(平成の仮面ライダーを数多く演じるなど、スーツアクター界の第一人者)は立ち方やアクションを含めた「芝居のキレ」で言い当てられることが多いですね。
テレビの放映を見て、「きょうの、なんか高岩さんぽっくなかったね」と言ったりしていると、高岩さんは同時期に撮影していた映画のほうに出ていて、別のひとがやっていたというのが後々わかったりするんですよね。
── それは見るひとが見るとわかる?
人見 代わりに入るひとも、元々のものに「寄せる」というか、似せて演じるんです。それでも、高岩さんならではの動きがあって、逆に自分の「個性」を意識したキャラクター作りをしているひとが多いです。
── 「個性」という点では、人見さんはどうされていたんですか?