土曜日の部活にやってくるOBが嫌いだった
弱小バレー部のキャプテンを務めていた高校時代、とにかく土曜日の部活が憂鬱だった。社会人になりたてのOBが、平日の憂さを晴らすかのように体育館に駆けつけるからだ。自分がキャプテンになってから取り組んだ施策は2つ。もちろん技術の向上ではない。
1:下級生だけでバレーネットを設営するのではなく、学年問わず体育館に来た順にやること
2:下級生が上級生の前を通る時に、中腰になって素早く通る風習を止めること
今でも間違った施策だとは思っていないが、この2つの改正は、厳しい上下関係を耐え抜いた経験を過大評価して社会人生活に突入したOBから、ことごとく嫌われた。代々受け継がれてきた伝統をぞんざいにしたと判断されたからか、時折開かれているらしいOB会に自分達の代だけが呼ばれないという状態が、2015年春現在も続いている。
「あいつら、ぜってー、会社で上司にイジめられてんだよ」
土曜日の部活にやって来るOBには2種類いた。そのうちに乱暴でなくなる人と、いつまでも乱暴な人だ。やって来たOBは押し並べて、絶対に取れない強いスパイクを打ってきて、「取れよ!」と怒鳴る。前者は、徐々に弱小バレー部のレベルを察知して、たまにはラリーが続く程度の強さでスパイクを打つようになる。後者は違う。「取れよ!」「取れんだろ!」「どうして取れねぇんだよ!」と、自分たちの時代のレベルを基準にひたすら打ち続けてくる。そんな土曜日は、OBの無茶に翻弄されるだけで終わってしまう。帰り道、駄菓子屋で片手に「酢だこさん太郎」、片手に「蒲焼きさん太郎」を持ちながら、「あいつら、ぜってー、会社で上司にイジめられてんだよ」と愚痴り合った。
坂上忍とヒロミの違い
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