英語の難しさ、それは日本語にはない世界のとらえ方にあります。例えば時制、冠詞、あるいはモノの数え方などが、その代表例です。今日はそういった「英語の独特の世界のとらえ方」の中でも最も端的な、「結論を先に言う」という言語的な特徴について考えてみましょう。
英語は結論ありき
高校辺りで、英語の基礎5文型というのを習ったことがあると思います。確か、こんな感じの5つでしたね。
SV
SVC
SVO
SVOO
SVOC
この5つの文型の中には、実に英語の際立った特徴を見いだすことができます。それは、英文は必ず先頭にS(主語)とV(動詞)がくるという事実です。
日本語はこの全く逆です。主語こそ先頭に来ますが、結論をくだしてくれる動詞は、最後の最後なのです。ですから文末まで読まないと、その話がなんなのか、判断することができません。「通り沿いのラーメン屋からとってもいい香りがして食欲をそそられたので、思わず入ってみたところ、驚くほどまずかった」なんて文章、英語ではありえません。ラーメンがうまかったのかまずかったのか、もう冒頭で明らかになってしまうからです。
違いは動詞が最後にくることだけではありません。主語が省かれる文章にもしばしば遭遇します。例えばかの有名な「世界の中心で愛を叫ぶ」はこんな書き出しで始まりますが、なんと6行中4行の文章に、主語が存在しないのです。
「朝、目が覚めると泣いていた。いつものことだ。悲しいのかどうかさえ、もうわからない。涙と一緒に、感情はどこかへ流れていった。しばらく布団のなかでぼんやりしていると、母がやって来て、「そろそろ起きなさい」と言った。」
あれ、よく見ると目的語さえも省略されていますね。母が「そろそろ起きなさい」と言った相手は、一体誰なんでしょう? 日本語話者である僕らにとって、こんなことは当たり前でなんの疑問も感じずにすんなりと読める文章です。ところが英語話者にとって、主語がない文章は、ありえないビックリ仰天のことなのです。っていうか、文章と呼ぶことさえもできないでしょう。 以下は「ハックルベリーフィンの冒険」の書き出しですが、どの文章もしっかりと主語+動詞で始まっています。
You don’t know about me without you have read a book by the name of The Adventures of Tom Sawyer, but that ain’t no matter. That book was made by Mr. Mark Twain, and he told the truth, mainly.
僕ら日本語話者にとっては、すべての文章に主語があり、その直後に動詞が続くというのは、やはり馴染みのないものです。なぜなら、僕らはこういった語順で思考していないからです。
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