ライトノベルは海外にもあるか?
っていうのはけっこうめんどくさい問題で、ライトノベルの定義によるとしか言えない。ざっくり言うと、「ハリポタはラノベに入るの?」ってことですね。《指輪物語》や《ゲド戦記》や『はてしない物語』や《ライラの冒険》はあんまりラノベっぽくないけど、《ハリー・ポッター》はかなり近いんじゃないですか。
つまり、「ライトノベルとは、ジャンル小説(ファンタジー、SF、ミステリー、ホラー)を中心とする中高生向けのエンターテインメント小説のことである」と定義すれば、当然、英語圏にもライトノベルはある。
アメリカでは前々から、児童文学と区別して、ヤングアダルトというジャンル名が使われてて、SF情報誌〈LOCUS〉の読者が投票で選ぶローカス賞にも、2003年からヤングアダルト部門が新設されている。
この部門は、ニール・ゲイマン『コララインとボタンの魔女』が最初に受賞して以降、そのゲイマンが2回、テリー・プラチェットが3回、チャイナ・ミエヴィルが2回、キャサリン・M・ヴァレンテが2回受賞。宮崎駿アニメの影響がけっこう色濃いスコット・ウエスターフェルドのスチームパンク3部作の第1作『リヴァイアサン―クジラと蒸気機関―』や、「未来少年コナン」を連想させるパオロ・バチガルピ『シップブレイカー』なんかも獲ってます。
SF方面だと、ここ20年くらい、日本のマンガ、アニメ、ゲームの影響をうかがわせる(オタク度の高い)作品が英語圏でもけっこう書かれてて、中には日本製ライトノベルにかなり近い感触のものもある。
その意味ではとくに目新しいことでもないのに、いまさらこんな話を持ち出したのは、この春、英語圏から翻訳された学園ライトノベル(っぽい作品)が立て続けに3タイトル刊行されたから。
そのひとつは、前々回の当欄で紹介した弱冠26歳の新鋭ピアース・ブラウンの3部作開幕編『レッド・ライジング──火星の簒奪者』(2014年/内田昌之訳/ハヤカワ文庫SF)。
これは、肉体改造を受けた16歳の少年が全寮制のエリート校に潜入する学園ものだったわけですが、同時期に出たマーク・フロストのシリーズ第1作『秘密同盟アライアンス パラディンの予言篇』上下(2012年/大谷真弓訳/ハヤカワ文庫SF)を読んでびっくり。15歳の少年が全寮制のエリート校に転校してきて、学園内の謎の組織と闘う話で、そこだけとりだすと設定がまるかぶりです。
マーク・フロスト『秘密同盟アライアンス パラディンの予言篇(上・下)』(ハヤカワ文庫SF)
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