2015年2月第4週の主なできごと
・IPCC議長、セクハラ疑惑で辞任(2月24日)
・ネット広告、初の1兆円超え(2月24日)
・後藤騎手死去 競馬場に献花台(2月27日)
・錦織圭 世界ランク4位に (2月28日)
・ウィリアム王子が総理と福島訪問(2月28日)
炎上するベストセラー作家
おぐらりゅうじ(以下、おぐら) 2月11日の産経新聞に掲載された曽野綾子氏のコラムが「アパルトヘイトを容認している」と、南アフリカの駐日大使やNPO法人「アフリカ日本協議会」などから抗議文が寄せられました。
速水健朗(以下、速水) コラムの中身は少子化で労働力不足になり、これからは介護の現場などで海外からの移民が必要になるという主旨で「もう20〜30年も前に南アフリカ共和国の実情を知って以来、私は、居住区だけは、白人、アジア人、黒人というふうに分けて住む方がいい、と思うようになった」と。
おぐら 締めの一文は「人間は事業も研究も運動も何もかも一緒にやれる。しかし居住だけは別にした方がいい」でした。この件、人種差別はもちろんですが、ものすごくいろんな問題をはらんでいますよね。
速水 ベストセラー作家の舌禍では、この人と『殉愛』のでたらめが暴露された*1百田尚樹がいまのツートップだね。曽野綾子は、これ以前にも女性の育休に関して「出産したらお辞めなさい」と言って炎上してる。
*1 『百田尚樹「殉愛」の真実』宝島社
おぐら 「太ももの線丸出しの服を着て性犯罪に遭ったというのは、女性の側にも責任がある」「なぜならその服装は、結果を期待しているからだ」とか。発言や文章の一部だけを切り取って炎上するのはネットの常とはいえ、パンチラインが強過ぎます。
速水 ネットがない時代の人なんだよね。「私はブログやツイッターなどと関係のない世界で生きて来て、今回、まちがった情報に基づいて興奮している人々を知りました」って答えてたし。
おぐら 評論家の荻上チキさんがパーソナリティを務めるラジオ番組『Session-22』で、ご本人にインタビューしていたのですが、これが衝撃的で。荻上さんによると、現場では繰り返し「私はエレキは使わないから」とおっしゃっていたらしく。オンライン上で騒いでいたネット民たちがこの発言を聞いたら、我々はとんでもない人を相手にしていたのかもしれない……って戦慄するでしょう。
速水 “エレキ”って! エレキギターが不良のものだった時代の人というか、いや、エレキテル時代の人なのか? ちなみに『Session-22』は、「男性の性交経験率が5割を超えるのは29歳」というデータが誤りだったというスクープに続いての金星。
おぐら あの誤報を暴いたのはお見事でしたね。報道では「男性29歳・女性28歳」だったのに、実際は「男性20歳・女性19歳」だった。しかも原因は、調査を行った「日本家族計画協会」の単純な計算ミスという。
速水 うん。このニュースは機会があれば別で取り上げてもいいかも。
おぐら ですね。で、インタビューに話を戻しますと。曽野さんは1931年生まれで、インタビュアーの荻上さんは1981年生まれ。二人のやり取りを聞いていても、終始まったく話が噛み合ってないんですよ。曽野さんは語気を荒げて「この時代にそんなこと誰が考えますか」と言いつつも、「どうして抗議が来たのかまったく分かりません」「差別ではなく区別です」「私は撤回するつもりはございません」という論調は崩さず、最終的には「私が死ぬのを待っていただきたい」と。それは言っちゃダメだろう……って。
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