koyori(電ポルP) /石沢克宜
第6回 ゴンドラ
「……同じ高校に行くって、そんなに重要かな?」「当たり前じゃないか」
ぼくは高校なんか行きたくなくて、中学を卒業したくなくて、4月以降もみんなと一緒に変わらないでいたいだけなんだ。たったそれだけのことなのに、どうして許されないのだろう。――。大ヒットボカロナンバー『未来景イノセンス』の発売を記念して、一部を公開します。
「……同じ高校に行くって、そんなに重要かな?」
タローは言った。「そんなに大事なことかな?」
「当たり前じゃないか」
ぼくはむっとして答えた。
「でも学校別々でもお互いに時間取ってさ、帰りとか休みに会ったりとか電話で話したりするくらいできるだろ?」「わかってない。わかってないよ君は。人間は一緒にいる時間が長いほど相手に対してシンパシーを感じるんだ。一緒に過ごす時間が少なくなればその分だけ疎遠になっていくし、高校行けば環境も変わって新しい友達もできるしさ。ミドリには男がいっぱい言い寄ってきてさ、それも満更じゃなくなってきてさ、ぼくのことなんていつのまにか忘れちゃってさ……」
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この連載について
koyori(電ポルP) /石沢克宜
人々が空に住むようになった未来の世界。空中都市ホクトに住む中学生のシマは、幼い頃から好意を持っているミドリと同じ高校を受験するも失敗してしまう。好きな人や親友たちと離れ離れになる現実から目をそらすシマだが、時間は無情にも過ぎ去って...もっと読む
著者プロフィール
VOCALOID曲のプロデューサー。ロックやバラードを中心とした幅広い音楽性を持ち、 思春期の若者が抱える繊細な感情のような、情感溢れる世界観のある楽曲
を得意としている。投稿する楽曲動画のサムネイルはいずれも一枚絵で統一されてお
り、そのすべてに電柱が登場している。代表曲は『サイノウサンプラー』『独りん
ぼエンヴィー』『曖昧劣情Lover』など。
脚本家。ライター業や映像制作などを経て、現在は舞台の脚本を中心に活動している。舞台版『ココロ』の脚本・演出を担当し、ドワンゴ主催のニコニコミュージカル『ニコニコ東方見聞録』にも参加。コミカルでテンポのよい舞台に定評がある。ノベル版『ココロ』では舞台の脚本をベースに新たな物語を書き下ろした。