自分が大人になったことを感じる瞬間って、色々あると思う。
例えば、電車のつり革に初めて手が届いた瞬間。
例えば、ブラックコーヒーを初めて口にする瞬間。
初めて背広に袖を通す瞬間というのも、そのひとつに数えられるかもしれない。
今から約70年前。
当時成人したばかりのルネおじいちゃんに、母親は背広を仕立てようとしたらしい。その時のことについて今、90歳を超えたルネおじいちゃんはこう語る。
「俺はママンに言ったんだ。
『なんで背広なんか必要なんだ? これから俺たち、殺されるのに』」
第二次世界大戦の始まりは、ルネおじいちゃんの少年時代の終わりだった。
フランス・ランティーユ村の戦死者をまつる石碑。人口数百人の村にすら犠牲者が出た
「戦争が始まる前って、わかるものなんですか? 一般の人にも」
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