いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。
先日、シリアで亡くなられたジャーナリストの後藤健二さん、実はbar bossaの10年来の常連さんでした。
最初にご来店された時のことはもう覚えていませんが、仕事でNHKにいらっしゃることが多かったそうなので、一番最初はNHK関連の方が連れてきてくれたんだと思います。
bar bossaのことを気に入っていただけたのか、プライベートでもよくいらっしゃるようになり、一時期は週に1回くらいのペースで来店されていました。あの職業ならではの、芯がしっかりした雰囲気で、こちらの目をしっかり見て話す方で、でも物腰はとてもソフトで人懐っこい笑い方をする方でした。
また、後藤さんはとてもワインが好きな方でした。今日のグラスワインの特徴や品種を細かく質問されて、ブルゴーニュや南仏のワインをいつも好んで飲まれていました。一番最後に来店されたのは4ヶ月くらい前でしたでしょうか。ドミニク・ローランのパストゥグランが美味しいと誉めていただいたのを覚えています。
当然といえば当然なのですが、何度も親しく話をしたことのある人が、ああいう事件に巻き込まれると他人事ではなくなってしまうものです。以前は、こういう人質事件があっても、ただの傍観者としてニュースを観ていました。しかし今回の事件を知ってからは本当に当事者として、「何か僕にできることはないのか」と思い、しかし何もできずただひたすらテレビやネットなどから流れる情報を眺めていました。
僕の感じた気持ちが伝わるかどうかわからないのですが、毎日毎日、数分おきにテレビの画面やPCの画面に、親しく会話した経験のある人が人質として拘束された状態で出てくるのは相当つらいものがありました。また、何も知らず来店したお客様から、世間話的に後藤さんの話をされることもあり、どう答えていいのか困ることもありました。
今回、この話を書こうかどうか迷いました。もちろん私は後藤さんの家族ではないですし、友人というわけではありません。バーテンとお客様という関係で、私が偉そうになにか書くことに憚られる気持ちがあります。