吉瀬美智子がいま輝いている3つの理由
成熟した美しさと繊細な演技が高評価
社会現象ともなったドラマ『昼顔 〜平日午後3時の恋人たち〜』では不倫に身を投じるセレブ主婦を熱演。みずみずしくも成熟した美しさと、繊細で艶めかしい演技が高く評価されました。
“遅咲きで幸せ”な生き方が憧れの的
32歳で女優デビューし、昨年、38歳で出産。仕事においても、私生活においても、遅咲きながらも、マイペースに大輪の花を咲かせています。その生き方に多くの女性が憧れと共感を抱いています。
等身大のアラフォー女性としての“発信力”
自身の人生をつづった初のエッセイ本『幸転力』が発売後、各所で即完売するほど話題に。等身大のアラフォー女性として、リアルな生き方と正直な言葉が人気を呼んでいる。
悩み抜いて決断したら、もう迷わない
—— 初のエッセイ本『幸転力』は、吉瀬さんのこれまでの人生や考え方を正直に綴っていますね。執筆しようと思ったキッカケな何でしょうか?
吉瀬美智子(以下、吉瀬) 以前から本は書いてみたいと思っていたんです。さまざまな雑誌でインタビューを受けてきて、自分についてお話してきたことをまとめてみたい。作品を見てくださる方々にも、普段の自分の考え方を知っていただきたいなという思いがありました。
—— 32歳で女優に転身、38歳で出産など、決して平坦ではない道のりですよね。
吉瀬 私は自分でもびっくりするほど前向きなんですよ。すごく嫌なことがあってもすぐに忘れてしまうし、どんな状況でもハッピーを見出すことができる(笑)。だから、周囲で悩んでいる友人の話を聞くことも多くて、「こう考えれば、幸せに近づけるよ」ってアドバイスをすると喜んでもらえたのもうれしくて。
出産後は、自分の本を子供に残したいっていう思いも生まれましたね。もし、私が居なくなったとしても、本を読めばママの生き方を知ってもらう事ができる。それを、代々まで受け継いでもらえたらうれしいなと思ったんです。
—— 本には、吉瀬さんが人生を通じて体得してきた、ポジティヴに幸せになるための術がたくさん載っていますよね。
吉瀬 私の人生のテーマはずっとブレずに“幸せに生きること”なんです。エッセイの軸もそれしかないなと思って、タイトルにも、“幸”という文字を入れました。
—— “幸転力”って良い言葉ですよね。
吉瀬 何があっても“幸せに転じる力”……。モデル時代から15年来のお付き合いになる担当編集者の片江さんのひらめきで生まれた造語です。一緒に私の半生を振り返りながら、本を書く作業を進めている時に、「私の生き方や考え方にぴったりな言葉だよね」と。たしかに、一般的には不幸だととららえられがちなネガティヴなことも、私は自分次第で幸せにもっていくことができると常々思って生きてきたので。
—— エッセイの中で「理想のタイプは、“運がいい人”」「目標としているのは、“神様が応援したくなる人”」と書いていらしたのが印象的でした。
吉瀬 “幸せ”もそうですけど、“運”はお金では買えないですからね。でも、運は生まれ持って変えられないものだとは思わない。私にとって、運は自分次第。ネガティブに物事を考えて怠惰に生きていると、神様は味方してくれないような気がするんです。神様以前に、人が寄ってこないですよね(笑)。
でも、ハッピーな思考をもって、日々本気で生きていて、大切な時機を逃さずに、正しい選択をすれば運命はおのずと変わる。人間として誠実に生きていれば、まわりはもちろん、神様も味方してくれると思うんです。そこは、本を通じて、いちばん、伝えたかったところですね。難しいことなんて全然書いていなくて、要は自分の気の持ちようと思考で幸せになれる。そのための術は、シンプルだということを伝えたかったんです。
さらけ出さないと伝わらない
—— 結婚や出産に関する想いなど、かなり赤裸々なこと書かれていますけど、ここまで書こうと思えたのはなぜですか?
吉瀬 気持ちの部分はさらけ出さないと本を書く意味がないですよね。素の私を知っていただくのも、この本の目的ですから。『そこまで言うの?』っていう話もありますけど(笑)、家族やスタッフと話しあいながら書きました。
でも、この本を書こうと決めるまでは、すごく迷ったんです。私は何でもお仕事の決断をするときは、ものすごく悩みます。
—— そうなんですね。意外です。
吉瀬 本にしてもドラマにしてもオファーを引き受けた以上は、「あれは何だ?」って言われるものになってしまったら、それも自己責任ですから。今、自分がコレをやる意味は何か、その先に起こるであろうことまで想定して、じっくりと考えぬきます。でも、だからこそ、自分なりに納得して決断したら、もう一切、迷いません。後は、自分の全力を出しきるだけですから。
—— 吉瀬さんは、人生の選択が上手だし、決断力がありますよね。32歳の時にモデルから女優に転身する選択をしたのもそうですし、人気が高まり、多忙な中、38歳で出産されたという決断も潔いなと。
吉瀬 そうですね。ここだと思うタイミングを逃したくないから、思いきって決断してきたなと思います。
—— モデルや女優は、もともとなりたかった職業ではなかったんですよね?
吉瀬 はい。10代の頃は裏方として美容業界に進みたいと思っていました。目立ちたがり屋の恥ずかしがり屋っていう矛盾を抱えていますので(笑)。モデルも女優のお仕事も最初のきっかけは与えていただいたんですよね。女優は挑戦しながらも、「やっぱり向いていないかな」と葛藤することも多かったので、周囲に助けられながら進んできました。そう考えると、人との出会いってすごく大切なものだなと改めて思います。
もちろん、最終的に決めるのは自分だし、結果は自己責任ですけど。
—— 出産後の復帰作に『昼顔 〜平日午後3時の恋人たち〜』を選んだっていうのも、素晴らしい選択と決断ですよね。
吉瀬 あの作品に関しては直感のみで決めましたね。私は普段はすごく考えるし、計画的。だからこそ、「コレだ!」って即座に確信を持てるものに出会えると迷いません。『昼顔』はお話をいただいて、台本以前のプロットを読んだ段階から、「やりたい!」と。
—— 出産後のオファーとして、不倫ものというのは戸惑う気がするのですが。
吉瀬 復帰作って、どういう出方をするのかって大事ですよね。たぶん、たいていの人は悩む話だと思うんですよ。不倫がテーマで肌の露出もある—— 。母親になったばかりの女優がやるには躊躇する作品かもしれない。でも、作品としておもしろそうということに確信が持てたんです。せっかく出会えたのだから、絶対にやりたいと思って、主人にも誰にも相談せず、1人で決断したんです(笑)。
—— 事後報告で大丈夫でしたか?(笑)
吉瀬 うちは、そういうの全然、大丈夫(笑)。でも本当は私自身が、もう少し休みたかったし、しばらく、娘と1日中、一緒に過ごしたかったですけどね。思い切って決断して良かった。
脚本の井上由美子さんに、滝川利佳子という役を当てがきで書いていただいて。素晴らしい共演者やスタッフとお仕事ができて。私にとってはご褒美のようなお仕事だったなと思います。
次回、「幸せに生きる“潔い女の選択”」は11/11更新予定
吉瀬美智子(きちせ・みちこ)
1975年福岡県生まれ。モデルを経て、2007年女優デビュー。2011年2月「エランドール賞」新人賞を受賞。2010年に結婚、2013年に第一子を出産。
構成:芳麗 撮影:小島マサヒロ
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