ケータイ小説、その後
数年前に『恋空』がヒットし社会現象にまでなったケータイ小説。ブームが収束して以降、その存在を見かけることは少なくなりました。とくに都心の書店では、棚を見つけるのも一苦労です。しかし存在自体がなくなったわけではなく、"ティーンズラブ"という若い女子に向けたライトなエロラブコメにシフトチェンジし、地味に定着しているようです。ちなみに携帯小説の老舗スターツ出版や、魔法のiらんどを買収したアスキーメディアワークスだけではなく、あの集英社もこのジャンルに参入していることが人気の証明になるのではないでしょうか。
そして現在のケータイ小説を語る上でかかせないのが、全国の学校で草の根的に広まっている「朝の読書運動」通称「朝読」。この運動の広まりで、最近では学校の図書室に置いても不自然ではない、「品行方正」なケータイ小説も生まれています。例えば、スターツ出版が毎日新聞と共同で開催している「日本ケータイ小説大賞」の第六回受賞作品『あの夏を生きた君へ』(スターツ出版)は、文体はケータイ小説のそれですが、いじめによる不登校や戦争を題材にしています。
一方でコミック化や映画化などメディアミックスでもヒットを飛ばしている『王様ゲーム』(双葉社)のようなホラー・サスペンス小説も一定の需要があるようです。
しかしながら、『恋空』的というか『ケータイ小説的。』(速水健朗・原書房)な実話ベースのケータイ小説も消滅したわけではありません。相変わらず十代の妊娠や悲恋的な内容も多く、そして『恋空』の読者層が年齢を重ねたせいか、嫁と姑のバトル小説や浮気相手に復讐する小説のような、コンビニの主婦向け漫画雑誌にありそうなコンテンツがココ数年人気のようです。
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