「ライフスタイル」は誰にでも変えられる
岸見一郎(以下、岸見) こんな話があります。ある風が強い日に、向こうから知り合いが近づいてきました。その人は、密かにあなたが好意を抱いている人だった。しかし、すれ違いざまに声をかけようとしたら、目をそらされてしまった。そういう事態があったときに、多くの人は「嫌われた」「避けられた」と思うでしょう。しかし「風が強かったので、コンタクトが歪んで目をそらしたんだ」と思える人もいます。そういう人は、幸福度が少し高いですよね。
和田裕美(以下、和田) そうですね。もっと幸福度が高い人は「私のことが好き過ぎて、照れて目をそらしたんだ」と思うかもしれません(笑)。
岸見 そうですね(笑)。「嫌われた」と思ってしまえば、その人との関係は終わってしまいます。しかし、一方でそう思えば振られるというリスクを冒さなくて済むことにもなる。つまり考え方次第でいくらでも物事のとらえ方は変わります。こうした思考や行動の傾向をアドラー心理学では「ライフスタイル」と言います。問題をどのように解決するかの癖みたいなものです。「嫌われた」と思うような私は嫌だなと思っても、その馴染みのライフスタイルでいる限り、次に何が起こるか予測することはできます。しかし、「私のことが好きで、目をそらした」と考え方を変えた瞬間に、その先の人生がまったく見えなくなる。そういう怖さがあるため、人はライフスタイルを変えたくないと思うのです。
和田 そのほうが楽だからですね。
岸見 はい。人間は一度したことは何度でもできるようになります。だから私は、あらゆる場面でこれまでとは違った考え方をするトレーニングを1週間してみてほしいと勧めています。
和田 考え方を変えるだけでも、ずいぶん人生が変わりますよね。