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地域再生は地方選対策になる!?
シンガポールへの引っ越しがようやくひと段落した。私の引っ越しの経緯については追って、このコラムで紹介させていただきたい。
引っ越しの前に地元である鳥取県鳥取市に帰省した。やはり地元は落ち着くし、一家団らんは楽しい。しかし、そのなかで話題になったのは、深刻な「人口減少」と「高齢化」。私の地元に限らず、地方は国の課題を先取りしている傾向にあるが、特に私の家族のような地方都市で事業をしている人たちに、人口減少と高齢化が大きな影響を及ぼしているということを痛いほど感じている。
安倍総理は次期臨時国会で「地域再生改正法」を提出し、地方の人口減少を食い止めるための予算をつけていくという。政治的には正しい判断だと思う。来春に待ち構える統一地方選挙において、滋賀県知事選挙の苦杯を挽回するために、地方に予算をつけて得票を狙っていくというわけだ。
しかし、日本の財政からみても、今後、継続的に地方に予算をつけていくことは難しい。持続可能な政策ではないと思う。もはや通常の人口対策では、この問題は解決できないであろう。私はここで、「地域再生」ではなく、「二地域間居住」を提案したい。予算をつけた政策によって、若い人たちを田舎に移住させるのではなく、国民全体が地方と都市を行き来しながら生活できるようにするのだ。
成功者が東京だけを目指す日本
海外の資産家や成功者たちは、都会の喧騒を離れ、自然を求めて、田舎にどんどん引っ越している。一方、日本は地方都市で成功すれば、いや成功するためにも、どんどん東京に引っ越す。学生も東京の大学を選び、地方の大学を選んだ学生も深夜バスで東京に通いながら、人脈と情報を手に入れ、東京での就職を目指す。
大阪や福岡といった地方都市が起業支援を頑張って行っているが、そういった制度を活用しながら、実は東京を目指している起業家を私はたくさん知っている。自治体は、地域に定住してくれる起業家を育てることができず、彼らの東京への旅立ちを地方の税金(国からのお金も多いが)で支援しているのが現状だ。
私は成功者が東京のような場所に集中するのは自然なことであると思う反面、長い目で見ると、それは危険なことであるとも思う。東京に住むことで短期的には成功の確率は高まるが、長期的には判断力などが落ちていくと思うからだ。また、地震などの災害リスクも高く、東京で何かあった時には日本の経済、文化、社会のほとんどが失われてしまうということになりかねない。
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