音楽とはなにか?
松尾謙二郎(まつお・けんじろう/インビジブルデザインズラボ 代表)
コンポーザー、音楽ディレクター、メディアアーティスト、クリエイティブ・ディレクター、テクニカル・ディレクター、リサーチャー。武蔵野音楽大学卒業。民族音楽、ジャズ、ラテン、クラシック、現代音楽まで幅広く網羅し、常に進化する新時代の作曲家のあり方を模索している。ソフトウェア、ハードウェアなどの製作にも精通。ACC、ギャラクシー、CLIOなどのクリエイティブアワードを多数受賞。ファッションブランドなど他業界とのコラボレーションも多い。
僕はサウンドデザイナーや作曲家という肩書きをもっているのですが、いつもその枠を超えるようなことをやろうとしています。僕らの時代は、各職業で専門分野が分かれていました。でも、今はソフトがあればデザインも、映像も、音楽も簡単に編集できますよね。あなた方はそういうことができる世代の人達だと思っています。だから今日は、音楽のつくりかたの話はしません。もっとその根本にある「音楽とはなにか」という話をします。
最初に言っておきたいのは、僕が話すことはあくまで私見にすぎない、勝手な意見だということ。ひとつの意見として頭の片隅においておくのはいいと思います。ものを考えるときには、自分がどの立ち位置にいるのか把握しておくことが必要ですから。僕の考えがその一助になれば幸いです。
さて、「音楽って何?」という話です。西洋思想全体に思想的影響を及ぼした神学者、アウレリウス・アウグスティヌスはこう言っています。
音楽とは、音をよく整える学問または芸術である。
なるほど。たしかにそうかもしれません。じゃあ、そこから1500年くらい時代をすっ飛ばして、実験音楽家のジョン・ケージはどう言っているか。
音楽は音である。
コンサートホールの中と外とを問わず、われわれを取り巻く音である。
これはどういうことかというと、音楽というのは演奏されているものだけでなく、今ここにいる空間の音も音楽なんじゃないの、ということ。この瞬間、音楽の概念がブレイクスルーしたんですよ。ではさらに後の世代を代表して、おれの意見(笑)。
音楽とは振動の一種である。
さらにプリミティブなものとして捉えてみたら、ここまで行き着くと思います。
なぜ音楽は生まれたのか
僕が考えるに音楽の起源はたぶん、原始人が木の棒を叩いていたら、なんとなくトランス状態になって「気持ちいいなー」みたいなことだったのでしょう。遊びながらリズムができて、それをおもしろいと感じたことが始まりなのではないかと思います。
Golden Loves Guitar !!
例えばこの動画。犬の動きと表情が見事に、ギターの音に同期してるんだよね。なかなかいいグルーブ感持ってるんだ、こいつ(笑)。動物に音楽がわかるのかどうか、はっきりはしていないけど、これを見る限りちょっとわかるんじゃないかという気がしてくる。音楽には生き物が感じる原始的な喜びがあるんじゃないでしょうか。
また、音楽によって、どういう原理なのかわからないけれど心が動いてしまうことってありますよね。音楽は記憶や感情とリンクしやすいのです。
Emotional baby! Too cute!
これはちょっと話題になりました。まだ1歳前後の赤ちゃんなんだけど、お母さんが歌い出すと、涙を浮かべるんだよ。最初は「ただぐずってるんじゃないの?」と思うんだけど、ずっと見ていくと明らかに感動して泣いている感じなんだよね。おれは感動って過去の経験で培われてわいてくる感情だと思っていたんだけど、この子にはまだフラれた経験とか誰かと生き別れた経験とか、ないじゃない(笑)。人間は本来、音楽に感動する生き物なんじゃないかと思える動画です。
DJ for KIDS(KAZUHIRO ABO at 幼稚園)
これは幼稚園でプロのDJがプレイした動画。実際にクラブでかけるような曲をかけてるんだけど、子どもたち、とにかくノリノリなんですよ。子どもだから童謡じゃないといけないとかそういうことはなくて、ビートがあって、グルーブが感じられば年齢関係なく楽しめちゃう、ということがわかります。
音でメッセージを伝える役割
音楽にはコミュニケーションの要素もある。一緒に演奏すると心が通じあったような気がしますよね。音でメッセージを伝える役割もあるんですよ。
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