ユニクロは庶民の味方でエルメスは敵という誤解
藤野英人(以下、藤野) 糸井さんにお話をうかがうにあたって、過去に書かれたキャッチコピーなどをたくさん読みました。それでぼくは、糸井さんがすごく「水平」な人なんじゃないかと思ったんですよね。
糸井重里(以下、糸井) 水平。
藤野 フラットに考え、フラットに生きる。社員との関係もそうなんですけど、垂直ではなく水平的な世界観を持っていらっしゃる。高さや次元、世の中で偉いと思われているものを、水平化したり、倒したりして見てみる人なんだな、と。そこが糸井さんの魅力だなと思ったんです。
糸井 「倒す」ね。うん。
藤野 倒してみて見えてくるおもしろさを、言葉にしているんだなと思って。だからこそ、糸井さんがほぼ日というインターネットの場を持たれた時に、ご本人のキャラクターとネットの価値観がぴったりあったんでしょうね。ネットはもともと水平化された場所ですから。
糸井 そうですね。ものすごく意図的に、そうしているつもりです。ぼくのなかには、水平じゃない部分がやっぱりポコポコとあります。それに対してぼくは自覚的なんです。「ああ、ここでおれはえばりたいんだな」「わざと下に出てガマンしてるんだな」という気持ちの動きを把握してる。その上で、フラットにするにはどうすればいいんだろう、と考えています。
藤野 はい。
糸井 「損して生まれたな」と思っている人が、損していることにこだわっていたら、フラットが見えなくなるんですよ。それで、得しちゃってる人が「そんなことないよ」って言ってたら、また見えない。自分の状態に自覚的であると、フラットがどこにあるかわかるんです。
藤野 うん、うん。
糸井 藤野さんは、グリーン車ってフラットだと思いますか?