鉄角パイプの断面にみる角丸の成り立ち
プロジェクトの作品に合わせてフォントをつくるというのは、僕がよくやることです。デルトロフォントというのもあります。auのデザイン携帯iidaの欧文書体の開発もやっています。
和文で採用されていたモリサワ(フォント販売会社)のUD新ゴのMと組み合わせたときに、コントラストの具合がちょうどいい感じになるよう、サイズバランスを整えて設計しました。
この左上にあるのは、規格製材のスチール角パイプとよばれるものです。これの断面、角丸になってますよね。鉄板の厚さに対して、自然に直角に曲げるとああいうかたちになるんです。それは、素材の性質と厚みがもっている、本来の角丸です。
Macのソフトで、なんとなく角を丸くするのと、物の成り立ちがわかった上で、その物に対してどの程度の角丸をつけるのかということは、似ているようで見た目の仕上がりが全然変わります。ディテールのデザインというのは、こういうバックグラウンドを知っていることで、より精度があがります。
これからのデザインに必要なこと
「紙からオンスクリーンへ」
これはちょっと技術的な話なんですけど、ヨゼフ・ミューラー=ブロックマンというスイスのグラフィック・デザイナーが考えた“グリッドシステム”というグラフィック・デザインの構造設計手法があるんです。グリッドを下地として、ブロックごとに図版や文字を配置し、デザインを行うという手法です。
これはもともとエディトリアルデザインのために考案されたものですが、ウェブサイトのデザインに応用しても、すごくうまく機能するんですよね。また、8の倍数を用いたグリッドを活用すると、コンピュータの描画解像度とさらに相性がよくなります。
これからのデザインの話をすると、やっぱりコンピュータデバイスとヒューマン・インターフェイスは避けて通れないでしょう。
コンピュータはハードウェアとソフトウェアで成り立っていて、それらを連結して人間が操作する場合には、ヒューマン・インターフェイスが必要です。キーボードやマウスからタッチパネルへ、これまでの技術革新で、ユーザーインターフェイスはどんどん進化してきました。これから先も、きっとスマートフォンなどを超越する何かがきっと出てくる。そういうときには、今までのコンピュータの歴史を知識として自分の引き出しに入れておくと、迷わないですむかもしれません。
SF映画なんかに登場するインターフェイスは、機能しなくていいけれど演出としてそれらしい必要がありますよね。それも、インターフェイスデザインの一つです。ちょっと前の映画で、画面をポンポンとさわったら動くなんていうのは、iPhoneあたりで現実になりました。それと似たようなことは、今後次々起こるでしょう。やっぱりこの分野はとてもおもしろいと思います。
「新しいアイデアの発見と実現性」
普段見慣れてるコト/モノの状態に極端な変化をたえる。ボタンをかけかえる。異なる文化でおこなわれている事象をまるっと持ってくる。アイデアを考える視野を広く、大きく。壁をつくらない意識を常に持つ。
アイデアを考えるときは、フラットに、今の自分にはできないけれど、こういう可能性もあるよねというところから考えていいと思います。技術の限界なんかも気にしなくていい。どう実現するかは、そこから先の話ですから。
ライゾマティクスさんとお仕事をするときに、APIを開発して人工衛星にカメラとともに搭載して打ち上げたらどうなるかなとか、レーザーで月に絵や文字を投影したらどうなるだろう、なんて話をするんですね。
これって、実はリアリティがないわけじゃないんです。ただ、月に届くくらいのレーザーだと、そこを通った飛行機が大変なことになる(笑)。いわば兵器のような機械になってしまうでしょう。まあ、ぶっとんだ発想なんですけど、それくらい極端なことを考えていいと思います。
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