さて、前回は「生命が維持できればいいと思っている人々」と「食に命をかける人々」が集う国々の共通点をご紹介しました。
ところで、ワタクシが某国連専門機関にいる時にもこの様な紛争がありました。
食にこだわる人々の国際豆腐戦争
国連専門機関の中には、建物の中に、国連職員専用のスーパーというのがあります。英語でコミッサリーというんですが、外国人の職員が大半なので、現地では手に入りにくい様々な国の食べ物やらグッズを売っている国際スーパーです。職員特典として、砂糖、香水、アルコールなどは割引になっています。
米軍基地に潜り込んだことがある方は、基地内にはPXというのがあるのをご存知でしょう。PXとはPost Exchangeの略で、つまり基地内で軍人向けに物資を売る店ですね。日本も戦後は神奈川県などには沢山ありました。うちのお婆さんは戦争未亡人だったのでPXで警備員をやって一家を支えていたことがあります。あそこの中は完全なアメリカで、アメリカの物資が山の様に売っています。
まあ要するにコミッサリーは国連職員用のPXなわけですが、ワタクシのいた機関では、コミッサリーにおく物資を巡り、熾烈な戦いが繰り広げられておりました。なにせ180カ国ぐらいから人が集まっているので、どの国の人も、イタリアでは手に入りにくいお国の物資をゲットしたいわけです。
イタリアって案外田舎ですから、外国のものはあまり売っておりません。そういうわけで、「何処の棚に何をどのぐらいおくか」ということを巡り熾烈な戦いが繰り広げられるのでした。
ある時、このコミッサリーにおいて「国際豆腐戦争」が勃発いたしました。チーズコーナーの横には、地元で作られた豆腐が売っておりましたが、買うのは主に日本人。そもそも国連というのは、日本人以外東洋人職員はあまりいないわけです(これにはいろいろ政治的な理由がある)。
豆腐は日本人職員のために売られていたわけですが、現地の一般職職員の多くを占めるイタリア人や、他の国の人々はそんなケッタイなものは食べないわけです。代わりに「もっとチーズの種類を増やせ。そんなものはいらん」という議論が勃発いたしました。
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