4 ユウヒとウタヒメ
【7月16日(木) 昼休み】
「以上が、今年の文化祭の概要になります。続いて時間配分ですが、冊子の七ページを——」
会長のはきはきとした説明が、カメラの前で続く。
ここは放送室に隣接する、撮影スタジオ。
生徒数の多い奏丘高校では、体育館ではなく、各教室に設置されたテレビ画面を通して全校集会が行われる。
わたしとルカ先輩は、ブース横の部屋で防音ガラス越しに撮影の様子を見ていた。
事前に何度も調整を重ねた文化祭の計画発表は、会長のなめらかなしゃべりもあって
各教室の様子を見に外を歩いていたレンとカイト先輩が帰ってきた。
「それでは、みんなで力を合わせて文化祭を成功させましょう。えー、ちなみに、文化祭後に新しい生徒会役員を選出することになります。立候補や推薦など随時受け付け中となっておりますので、そっちもよろしく!」
ちゃっかりと宣伝を入れて、放送を終える。その後、担当の先生からはちくりと注意されたが、それだけで済んだ。
今となっては生徒会に対して協力的な先生がほとんどで、その信用を勝ち得たのがほかならぬ会長のがんばりだと、みんなが知っているのだ。
「おつかれさまです!」
ブースを出てきた会長に、わたしはミネラルウォーターのペットボトルを渡した。
「やー、終わった終わった。来年はカイト、よろしくね」
その状況を想像したのか緊張で青ざめるカイト先輩に、会長はケラケラ笑っていた。
わたしは、レンと一瞬だけ視線を交わし、すぐにそらした。
レンも、同じだったと思う。
学校では期末テストも終わり、あとは夏休みを待つばかりになった。夏休みも出てくることにはなるけど、生徒会バンドの練習も順調で、大きなトラブルはない。わたしとレンの関係以外は……。
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