【7月14日(火) 放課後】
わたしはルカ先輩に習いながら、放課後の音楽室でピアノを借りてキーボードの練習をするようになった。
「そうそう、いい感じ。やっぱりリンちゃん上達早いわ~」
「いえ、そんな。先輩たちに比べたら全然です」
ルカ先輩と並んでピアノを弾くのは、ちょっと懐かしかった。あの時もよく褒めてもらえたから、得意げになったりもしていたけど、それがとんでもない勘違いだったと今になって思い知らされた。
「なんだかわたしが足を引っ張ってるような……」
みんなの上達度は、すごかった。あっという間に置いていかれた。
「会長やレンくんは経験者だし、カイトくんはしっかり音楽やってた人だからね。しょうがないわよ。普通に考えたらリンちゃんだってすごいのよ?」
「うう……慰められるとよけいにつらいです……」
半泣きのわたしの頭をなでながら、ルカ先輩は微笑む。
「指が! わたしの指なのに言うことをきかないんですよ! きっと何かに乗っ取られてるんです! 宇宙人とかそれ的なものに!」
「リンちゃん落ち着いて」
ふざけて二人で笑い、ふうと一息つく。
こういうところはお互い昔と変わらないみたいだ。
休憩しようということになって、ルカ先輩が鞄から出したのどあめを、ありがたくもらった。
話題は自然と、生徒会のことになる。
「私ね、会長にお礼言われたんだ。あの二人を生徒会に連れてきてくれてありがとう、って」
「え、や、わたしはそんな。たいして役に立ってないですし」
「ううん、すごく助かってるわよ。仕事だけじゃなくて、雰囲気とかも。とっても明るくなったのよ」
「でも……ときどき空気悪くしたりしてませんか?」
「ふふふ。そんなことないわよ。心配性は変わってないのね」
「う~……」
ルカ先輩には、わたしの昔からの悪い癖もほとんど知られている。接点はなかったけど小学校も同じだったし、中学では生徒会で多くの時間をいっしょに過ごしたのだ。
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