事態を動かしたのは、ずっと静かになりゆきを見守っていたカイト先輩だった。
「会長もルカさんも、気持ちはわかるけど、少し落ち着きましょう。彼らも考える時間が欲しと思うし。ね?」
向けられた優しい視線に、わたしは小さく、でも何度もうなずいてしまった。
ぶはあ、と会長が大きく息を吐き、背もたれに身を預けて天井を仰いだ。
「まー、そうね。アタシもちょっと焦りすぎたわ。ゴメン」
「でも、きみたちが生徒会に入ってくれたらいいって思ってるのは僕も同じなんだ。レン君、リンさん、今すぐじゃなくてもいいからさ、よかったら前向きに考えてみてよ」
ようやく場の緊張が緩んで、わたしもレンも来週中に返事をするということで、約束をした。
レンは、何やら思うところがあるのか、あまり言葉を発していなかった。
思い出したように飲んだお茶は、すっかり冷めていて、さっき飲んだ時よりも苦く感じた。窓の外を流れる桜が目に入り、いつもと変わらない平凡な春だと思っていた朝の自分を思い返しながら、「エイプリルフールって、過ぎたよね?」なんてことを考えた。
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