5月12日のブラジルW杯メンバー発表まで、あと4日。はたして……、
『サプライズ当選、サプライズ落選はあるのか?!』
どうだろう。個人的には、負傷を抱える長谷部誠、内田篤人、吉田麻也の3人が本番に間に合うようなら、サプライズは多くても1~2名じゃないかと思う。逆に、3名も4名もシンデレラボーイが出てきたら、僕らはザックジャパンの勝ち残り予想をもっとネガティブに変えたほうがいいかもしれない。サプライズが多いこと=チームがうまくいっていない証拠、だからだ。
まず、『ベテラン枠』は必要なのか?
2002年の日韓ワールドカップでは、中山雅史と秋田豊のサプライズ選出が大きな話題になった。指揮を執ったフィリップ・トルシエは、サッカーマガジンZONEの最近のインタビューで次のように告白している。
「メンバーを最終的に決めたのは、本当に発表(5月17日)ギリギリになったときだった。親善試合のノルウェー戦(敵地で5月14日に開催)で0-3と完敗した選手たちの顔を見て、『このメンバーで本当にワールドカップを戦うことができるのか?』と不安を覚えたのだ。(中略)何も怖れるものはなかったはずだ。しかし、このチームには何かが欠けているのではないかと思った。このチームにはリーダーが必要だ。チームを守る存在が必要だ。(中略) (今の日本代表は)海外のトップ選手と対戦するときもコンプレックスを感じることがない。そして現地の言語を習得し、異なる文化を吸収している。日本代表の選手たちは、10年前と比べて大きく変わっているのだ。こうしたことが代表チームに成熟を与えている。今の日本代表はベテラン選手の経験や力を必要とはしていないだろう。それぞれの選手が『中山』であり『秋田』なのだ」
トルシエは自らがベテランをサプライズ選出した一方で、ザックジャパンには同じような枠が必要ではないと言う。一方、ゲキサカのインタビューでは、福西崇史さんがトルシエとは正反対のことを答えている。
「個人的にはベテランの選手がいた方がいいんじゃないかと思います。ただ、それは何かがあった時。例えば、1戦目を落としてしまった。僕らもドイツ大会の時は、どうやって立て直すかという時に、それぞれがやってしまっていた。そういうときに経験のある選手がいると違うとは思います」
福西さんが答えたキーワード、“何かがあったとき”。ここが重要だろう。
ベテラン枠といえば、2010年の南アフリカワールドカップでは、第3GKとして川口能活がサプライズ選出された。南アフリカ入り直前のスイス合宿で行われた選手ミーティングでは、連敗続きのチームに対し、田中マルクス闘莉王が「俺たちは下手くそなんだから、下手なりにやらなきゃダメだ!」と発言し、中澤佑二もそれに同調した。ディフェンスのふたりの要人が主張したことがきっかけになり、最終的には引いて守るチーム戦術へ変更。この選手ミーティングのまとめ役を務めたのが川口だったそうだ。世界のサッカーでは、意見の相違をきっかけにチームが分裂するのはよく聞く話だが、岡田ジャパンがふたたび異なる方向性の元にまとまったのは、サプライズ選出された川口の存在が大きかった。
中山や秋田にしろ、川口にしろ、“何かがあったとき”、ベテランの力はチームをまとめてくれる。だから必要とされる。
たぶん、福西さんのドイツワールドカップのときは、ベテランのサプライズ選出が必要だったんだと思う。オーストラリア戦の後半に5分で3点を取られたショッキングな敗戦のあと、チームは団結した形で立ち直れなかった。そう、福西さん自身が言っているのだから。
ところが、ザックジャパンはどうかと考えたとき、このチームはすでに岡田ジャパンのスイス合宿のような苦難を、セルビア&ベラルーシ戦のあとに経験している。そして見事に乗り越えて、オランダ戦とベルギー戦で結果を残した。だから、この時点で“何かがあったとき”、チームを修正してまとまる力を、ザックジャパンはすでに充分に備えていることを証明したんじゃないかと思う。
トルシエと福西さんの両方の意見を聞くと、ザックジャパンにはベテラン枠が必要でないと、ますます強く感じた。
ベテラン枠に求められるのはリーダーシップというより、カリスマだろう。「この人が言うのなら仕方がない」「この人が手を抜かずにやっているのなら、自分もやらなきゃいけない」と、その存在感で人を動かせるような選手。そうなると大体がベテラン選手になるので、『ベテラン枠』という呼び方になってくる。
もう、ザックジャパンにはそれくらいの存在感のある世界のビッグクラブの選手が何人もいるし、また、トルシエが言うように、そんな力を必要とするほど精神的に未熟な選手がいるとも思えない。
よって、ベテラン枠、今回は必要なし! というのが僕の結論。みなさんはどうだろうか?
そして、次はこの問題。
『ジョーカーは誰だ?』
2010年の南アフリカワールドカップで、岡田監督はそれまであまり出場機会のなかった矢野貴章をメンバーに入れた。
この矢野については、スタメン起用を想定しておらず、試合終盤の逃げ切り、あるいは空中戦を想定して入れたものだ。スタメンの11人はすでに固まっているが、点が欲しいとき、あるいは点差を守り切りたいときなど、特定の状況で、特定の役割を与えたい選手。それが『ジョーカー』だ。
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