ウィルさんは、当時の響がライブハウスの他に、引っ越し業者や、日雇いのバイトをしていたことを話してくれた。
「でも俺が聞いた限りだと“ギターを買いたいから”なんて話してたんだ、こいつは。それは生活費だったってことか」
「——……」
「いや……おまえのことだから、学費も稼ごうとか考えてたんじゃないか……?」
響は答えない。するとウィルさんは、わたしのほうに向き直った。
「先生、コイツ見てくれがこんなだから、街中でもつまんない連中に絡まれたり、ちょい前にここで起こった事件みたいなやつに巻き込まれやすいんですが……。妙にクソ真面目っつーか、馬鹿なところがあるんですよ」
それは話を聞いていて、なんとなくわかった。響は不良なんかじゃない。パッと見や話し方で誤解されそうな雰囲気だけど、根は真面目で不器用で、音楽が好きな高校生なんだと思う。
「……響くん。学校のみんなは、あの事件があって響くんがこなくなっちゃったから、だから誤解してるの。でもそれだけなの」
理真の声にわたしも頷いた。
「——……」
「わたし、あなたと会うのは二回目だけど……。あなたが学校に出てきて、みんなと普通に接すれば、そんな事件を起こすような人物じゃないって……。すぐにわかることだと思うんだ。だから……!」
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