二村ヒトシ、信田さよ子先生に会いに行く
信田さよ子(以下、信田) 二村さんの『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』(文庫ぎんが堂)は、ずっと思っていたことが端的に書いてあって、とても怖い本だと思いました。
『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』(文庫ぎんが堂)
二村ヒトシ(以下、二村) え、怖かったですか?
信田 褒め言葉ですよ。心理学や精神分析や社会学なんかで難しく言われていることを、 「心の穴」とか分かりやすい言葉で表現している。定義する言葉を等身大にまで降ろしてきているところが、私はありがたく、すごくいいことだと思いました。
二村 どうもありがとうございます。この本の読者にも信田さんのご著書を読んでいる方はたくさんいらっしゃると思うんですけど、実際にカウンセリングを受けるにはまだ抵抗があるという人が多いようなので、まずは、信田さんのお仕事、カウンセリングや活動はどんなふうにされているのか、というのをおたずねしたいんですが。
信田 一般的に日本では、気分が落ち込むと眠れないとかいう状態になると「まず精神科へ……」って考えられがちですよね。でも私たちは1995年から、 医療システムの外で、 治療ではなく問題解決を目的としてカウンセリングを実施してきました。
二村 対象はどんな方々なんですか?
信田 対象としては、アルコール、薬物、ギャンブルといった依存症、そして摂食障害の本人やその周辺の家族ですね。 夫がすごく酒を飲んだり、 彼氏が薬やっちゃってても、たいてい本人はカウンセリングに来ないんですよ。だから家族の相談はすごく重要なんです。21世紀に入ってからはそれに加えて暴力。暴力というのは、夫婦や恋人間の暴力、親からの虐待で、最近多いのは性暴力ですね。ここ10年ぐらいは『DV加害者プログラム』をやったりもしています。
急増するカウンセリングに行く男たち
二村 まず相談に来られる方は女性なんですか?
信田 8割方そうですね。
二村 問題を起こした男性本人は自らは来ない?