ロロの言う通り、例のライブハウスは歩いて五分程度の距離にあった。外観は想像していたよりも現代的な建物だ。
ロロはスタスタと地下に向かう階段を降りていき、入り口の防音扉を「ちわース」と引っ張る。
「か、勝手に開けちゃっていいの?」
「ああ、大丈夫スよ。俺、ここの店長と知り合いなんで」
店内は薄暗かった。まだ準備中なのかもしれない。もう一度声をかけると、通路奥にかかっていたカーテンが少しだけ開いた。
「——客入れは八時からなんですが」
カーテンの隙間から男性の声が聞こえる。
「どうも。ご無沙汰です」
「——ん? あ……、ロロさん?」
薄暗いので顔ははっきり見えない。だが若い男性のようだ。テノールとバスの中間くらいのいい声だ。
「少しだけ時間いいスか? ちょっと頼まれごとがあってきたんだけど」
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