「あのときの自分のスピーチが、新入部員を増やせたかっていうと、微妙なところなんだけど……。でもわたしの前の部長が、とってもかっこいいスピーチだったんだ」
「未来先生の、前の部長?」
「うん。それがきっかけで、合唱に興味なかったのに入部した部員もいたんだよ」
「へえー……!」
「『桜ノ雨』っていう歌の歌詞をスピーチの随所にちりばめてね。『それでも僕らはここにいるよって言いたい人。合唱部で待ってます』で締めくくったのが印象的だったんだ」
「……!」
突然、理真がハッと身を起こした。
「『桜ノ雨』ってもしかして“
「……あ!」
そうだった。
理真は音浜高校に入学当初、いちばん初めに歌った曲が『桜ノ雨』で嬉しかった、と音楽室で、わたしに話していた。
「じゃあ桜音春さんと未来先生は同じ時期に、合唱部にいたんですね!」
「うん。一学年上の先輩だったんだ」
「へ~~。もっと前の卒業生だと思ってました。桜音先輩かあ。今の合唱部にもそういう人がいたらなあ」
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