ネット上のあらゆる言説はゆがんでいる
—— 川上さんに、日本の右傾化の話を聞きたいと思ったんです。いま、アイデンティティを国に重ねて、自尊心を保つ若者が増えていませんか。それにはネットも加担しているような感じがするのですが、どうでしょう。
川上 日本の右傾化って、マスメディアに対する反動だと思うんですよね。
—— 左翼的なメディアに対して、ということですか?
川上 そうです。ネットで起こるほとんどのことは、現実社会のタブーとなっているニッチな部分に、エネルギーが流れ込むという現象だと思うんですよね。右傾化もそのひとつ。でもこれからどっちにふれるかはわからない。
僕は政治にかかわらず、あらゆるネットの言論はゆがんでいると思っているんです。それが、政治の場合は右のほうにたまたま向いているというだけの話です。
—— ネットではあらゆる言論がゆがんでいる。なぜでしょう?
川上 現実社会に対して、恨みを持っている人たちが多いからです。ネットに集まるヒマな人たちはそうですよね。
—— ヒマな人。
川上 限られた情報のなかで判断しちゃう人たち、ということですよね。でも、それがネット特有なのかは、よくわからないです。右傾化している人達が言っていることはすべて間違っているのかというと、あっている部分もありますし。既存のメディアが言うことも、あっていることもあれば、間違っていることもある。正直、確からしさにそれほど差は感じないですね。
—— 右傾化が進むと、戦争礼賛の気運が盛り上がって危ない、とは思いませんか?
川上 うん、思わないですね。いろいろ考えたんですけど、中国や韓国は反日政策をずっとやってきたわけじゃないですか。それがエスカレートした背景には、日本が何も反応しなかったということもあると思うんです。
で、いま右傾化した日本に対して、中国や韓国は怒ってるわけですけど、それによってこれから日中関係・日韓関係がどう変化するかは、正直わからない。日本が右傾化することによって、実は戦争の危険性は下がるかもしれません。それは「読めない」「わからない」というのが僕の結論です。
—— なにか現状に対してネット側でできることはないのかな、と思ったんですが。
川上 僕が危険だと思うのは、議論が一方向に極端にふれることです。日本の世論全体の特徴かもしれないけれど、ネット世論も例外じゃなくて、やっぱり極端にかたよるんですよ。そのときに、「ちょっと待て」と止められる空間をどう設計するか、ということは考えています。
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