都内のある歯医者は数字が並ぶパソコン画面を前にため息を漏らす。今月も収支は赤字。ビジネスマンの多いエリアで開業したものの、患者が集まらない。インプラントなどの自由診療の患者は1カ月に1人がせいぜいだ。診察台に座って開口一番、「今日は数千円しか持ち合わせていません」と言ってくる患者もいる。周囲にはすでに何件もの歯科診療所があり、上客はすでに食い尽くされていた。
同じく都内で開業する別の歯医者もパソコン画面をのぞき込む。モニターに映るのは地図情報サイトである「グーグルマップ」。今日訪れた初診患者の住所を打ち込み、航空写真で家を表示させる。家の外観から患者の年収を推定し、どれくらいの額の自由診療まで受け入れ可能か見当をつけるのだ。