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最終回 キョウセイ・ホームステイ【翠川初音】その日の帰宅後
初音の自宅。漣はこのあと解と一緒に高校の学生寮に引っ越すことになってる。落ち着かない初音をよそに、漣はスクリーンで何かを見ている。漣は何かに気がついた?いよいよ事件が動き出す!
★『こちら、幸福安心委員会です。女王様とハピネス・サマー・ゲーム』発売を記念して、前作にあたる『こちら幸福安心委員会です。女王様と永遠に幸せな死刑囚』の一部を公開します。
♪こちら、幸福安心委員会です。♪
【翠川初音】その日の帰宅後
漣くんは、居間に座って、解お兄さんを待っている。
荷物はまとめ終わっていて、あとは中央区第一高の学生寮、解お兄さんの部屋に引っ越すだけ。その間、手持ちぶさただったのだろうか、漣くんはスクリーンを眺めていた。映っているのは、テレビ番組とか、そういうものではないみたい。
「……なに、見てるの?」
おずおずと近づいたけれど、ソファの上の漣くんは、やっぱり振り返らない。スクリーンをまっすぐに注視したまま、だけど返答はある。
「自由処刑の動画。テレビに記録されてるやつじゃなくて、ゴシックに移しておいた。それをもう一度、モニタしてみてる」
「市国民の敵……『緑の子』の映像だよね」
「そう。繰り返して見てみると、いろいろ面白いことがあった」
漣くんは、ゴシックのタッチパネルを操作して、巻き戻し、スロー再生、一時停止、逆再生、同じ場面を何度も見直している。今はきっと漣くんにとって、すごく楽しい時間なのかも。だから私は、あんまり邪魔しないようにした。
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この連載について
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ニコニコ動画で200万再生突破の大人気ボーカロイド楽曲『こちら、幸福安心幸福委員会です。』ノベライズ第2弾! 幸福だけが満ちている完全で完璧な理想郷、みずべの公園市国――。「バロック」で「歪んだ」新しい世界線に辿りついた漣、初音、凛た...もっと読む
著者プロフィール
ライトノベル作家。2006年『SAS スペシャル・アナスタシア・サービス』で第1回ノベルジャパン大賞優秀賞受賞、同書でデビュー。2012年にはボカロPである、うたたP氏と楽曲制作をコラボ。作詞を手掛けた『こちら、幸福安心委員会です。』が、投稿からわずか1ヵ月半で100万再生を突破するなど爆発的なヒットとなる。
うたたP氏が手掛けるVOCALOID-PVの動画イラストを担当。かわいさと狂気を含んだ二面性を持つ魅力的なイラストが話題を呼んだ。また、昨今は雑誌、ノベルのイラスト提供等、活躍の場を広げている。