【桃井流歌子】公園市国・第3広報スクリーン通り
見てしまった。別に目にしたくなかったのに、シンクフォンが鳴ったから。
第3広報スクリーン通りを歩いていた歩行者たちは、みんな、そう。
《注目してください。注目してください。政府広報です》
音声ガイドが流れる。まるで真っ黒な石板みたいな、第3広報スクリーン通り付近の高層ビル。つややかな壁面すべてが、一瞬にしてスクリーンに変わった。暗い蒼色の波紋が拡がって、窓から窓へと、拡散し終わってからチカチカ瞬く。
いくつもの画面が集合して、ひとつになる。広報スクリーンに変化した壁面を、私たちは仰ぎ見る。市国民として当然の義務だから、もちろん、音声ガイドがあったら見なければならない。
そうしなくてもいいのだけれど、仮に無視すれば(気づかないふりをしても)別の警告メッセージが出る。その瞬間、みずべの公園市国民としての基礎幸福点が、キッチリ減点される。つまりマイナス評価。
誰でもそれは困るから、いっせいに第3広報スクリーンに目を止めていた。
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