おれはフリー(ソフト)しか使わない……そんなスーパーハカーなおれことめろん先生ですが、この連載も無事に第3回!サイバーテロの脅威に晒されながら、先人たちの歩みとBLに対するリスぺクトを胸にやおい穴の奥を探索する我々。前回のオススメポイント「男がかわいい」に続く第2のポイントは……果たして。
着実に腐ってきている男子よ!刮目せよ!
同性同士だからこそ生まれる対等な関係性
めろん 前回は男でも楽しめるBLのポイントとして、「男のかわいさが堪能できる」っていうのを挙げてもらったけど、他はどう?
金田 もちろんあるよ。「その2 男同士の対等なラブバトル」。
めろん ほほう。どういうこと?
金田 ようするに「関係性」を楽しむってことだね。
すごく乱暴に言うと、男女の恋愛って、基本的には、力の強い人と弱い人の関係性を描くことになってしまうと思うんだよね。それはまず体力的にもだし社会的地位とかお金といった話も含めてなんだけど。BLでももちろんそういう作品は多くて。たとえば人気シリーズである『純情ロマンチカ』(中村春菊)だって、攻めが金持ちの人気小説家なのに対して、受けの子は一般の大学生なんだよね。体格差もあって、無理やりヤろうと思えばできる。
でも、BLだと、それだけじゃなくて、ほぼ力に差のない関係を描くことも可能なんだよ。どっちかをどっちかが無理やりどうこうできない関係ね。ほぼ落差はない男たちが、駆け引きのように、またはバトルのように恋愛をして、どっちが受けでどっちが攻めかもわからなくなるようなBLが。男女の恋愛ものにも、もちろんそういう作品はあるけど、BLのほうが説得力があるんじゃないかな。特におすすめなのは、『窮鼠はチーズの夢を見る』(水城せとな)かな。
めろん 『窮鼠』は、おれも読んだんですけど、続編の『俎上の鯉は二度跳ねる』も併せて、レジェンド級の傑作ですね。妻がいるノンケの男・恭一が、ゲイの今ヶ瀬に迫られてズブズブの関係になっていく話。恭一って松浦理英子(注1)さんが『奇貨』で書いてた「半端ヘテロ」みたいなのだよね。
注1:作家。代表作に『ナチュラル・ウーマン』『犬身』など。「性器結合中心主義」への異議を唱え、従来の異性愛の枠にとらわれない愛のかたちを描く作品を多数発表している。
金田 楽だからヘテロをやっているけど、同性とのセックスにも抵抗はないという人ね。恭一も自分のことをゲイだとは思っていないし、女性とのセックスのほうが好きなんだけど、ゲイの男にチヤホヤされて抱かれるのも気持ちいいから、今ヶ瀬に抱かれるんだよね。
めろん そうそう。でも、今ヶ瀬の真剣な気持ちに向き合ううちに、だんだん自分の生き方について考えだすという……。『窮鼠』はね、恭一と今ヶ瀬の二人にかぎらず、すべての登場人物の行動とか心理がものすごく練られている。男も女も、作品のなかで、ちゃんとひとりの人間として生きてる。これはもうプロットが完璧すぎて、ドラマにしても小説にしても絶対におもしろい。
金田 BLって甘々ばっかりでしょ?って言ってる人にはもうこれだね。待ったなしのラブバトルを展開するBLは他にもあるけど、やっぱり『窮鼠』は欠かせないね。
めろん あと、俺が読んだなかで、たしかサラリーマンもので良いのがあったような……。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。