もう「金に女はついてくる」なんて言わない
藤野 新刊の『ゼロ』読みましたよ! いやあ、感動しました。
堀江 ありがとうございます。すばらしい書評を書いてくださったんですよね。
藤野 僕はこれまで堀江さんの著作を10冊以上読んでいるんですけど、そのなかでも一番よかったです。特に印象的だったのは、足し算の重要性について書かれているところです。多くの人は何かを成そうとするとき、すぐかけ算、つまり楽して成果を得られる方法からやろうとするけれど、ゼロに何をかけてもゼロ。まずは一つひとつ積み重ねていくことが大切なんだと書かれています。これまで「ホリエモン」は、かけ算の名人だと思われていましたよね。
堀江 みなさんがテレビなどで僕をよく見ていた時期が、僕にとってかけ算、すでに得た元手をどんどん増やしている時期だったからでしょうね。2004年に出した『稼ぐが勝ち』という本があるんですが……
藤野 ベストセラーになりましたよね。僕も読みました。
堀江 実は、『ゼロ』に書いてあることと、『稼ぐが勝ち』(光文社)に書いてあることは、本質的にはほとんど変わりません。でも、『稼ぐが勝ち』というタイトルにも表れているように、あのころ僕が抱かれていたパブリックイメージからすると、誤解を受けやすい表現が多かったように思います。2005年にはニッポン放送の株取得をめぐってフジテレビと騒動になりました。それでマスコミが偏った報道をするようになり、「ホリエモン」のイメージはどんどん傲慢なものになっていった。でも、僕の頭のなかは、ずっとモテない自分、貧乏だったころの自分のままです。『ゼロ』はそれをいかに克服していくか、というところに重点を絞って書いています。
藤野 そう、堀江さんは変わってないんですよね。
堀江 僕はいわゆる経営者のビジネス書に違和感があるんです。立派なことを言い過ぎてやしないか、と。起業するにも、世界から貧困をなくしたいなどのビジョンをもとに起業するのが王道で、とりあえず起業するなんてよくないという内容のものが多い。でも、そんな立派なビジョンを持っている人って、どのくらいいるんでしょうか。僕は、動機はどうであれ、とりあえず一歩踏み出してみればといいと思う。その一歩が、『稼ぐが勝ち』では「稼ぐ」ということだったし、『ゼロ』では「働く」ということとして書いている。稼ごうとしたとき、仕事って与えられるものじゃないんですよね。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。