原発は「オバケやタタリ、ケガレ」になりつつある
堀江貴文(以下、堀江) 原子力って世界共通の問題ですよね。仮に日本が原発をやめたいとか、ドイツがやめたいといったところで、中国はやめるわけないし。本来は各国が足並みそろえて進めていくべきものなのに、なかなか足並みをそろえられない。今後、この問題については、どうするのがベストウェイだと思いますか。
大前研一(以下、大前) まずは福島の現状を勉強してほしい。そうすれば、あのようなことは起こらないという方法が明確に出てきます。
堀江 それは実現可能っていうことですよね。
大前 もちろん。それで、私はそのために400ページを超える詳細なレポートをかいて無料で公開しています。そのなかで、こういう風にすればいいと提言までしていますから。要素はふたつあります。ひとつはハードの上でするべきこと。もうひとつはソフトの面、つまり組織やシステムにおいてこうしないといけないということ。後者については、国がやらないといけない。たとえば、緊急避難を誰がどういう情報で決めるのかとかね。
堀江 それってもうやることは決まっているんですか。
大前 まだ決まってないですね。
堀江 なにかやっているなんて話は、聞こえてこないですからね。
大前 だから、先日新潟知事の泉田裕彦さんが原発再稼働にノーと言っていましたが、あれは正しいんです。東電が直したのはハードの問題だけですから。ハードの問題では納得できても、いざそういうことが起こった時にソフト面での整備ができていない。たとえば柏崎・刈羽の場合、中越沖地震を経験しています。福島みたいに非常事態になったときに、知事から見たら「我々にどのくらい権限をくれるのか」「自衛隊などの発動権は」などがわかっていない。
3・11のときの緊急避難は枝野さんが一方的に発表しましたね。コレは、その地元自治体と相談、あるいは情報共有してやっていかなくてはなりません。しかも緊急避難のタイミングは「直ちに」と言われましたが、いまとなってみれば1週間後でもよかったわけですよね。そういうことを考えるとソフトの方面の改善は、国が主体的にやらないといけないけど、これは国も自民党もサボっています。まったくやっていませんね。
ただハードのほうは今回の福島みたいな問題を本当に反省して、調整すれば同じようなことが起こらないでなんとかする方法はあると思うんですよ。
堀江 私は結構前向きな話しだと思います。
大前 そうですよね。飛行機でも何でもそうですけど、科学というものはみんな多大な犠牲を払って前に進んでいくわけでしょう。日本は、やはりエネルギーを外から買ってきている国ですよね。ひとつは日本にあるエネルギーである地熱とかでやるのも手ですし。もうひとつは、やっぱり原子力に関しては、国民とのコンセンサスがとれる限り、動けるものは動かすと。多分54基の原子炉の半分ぐらいにはなると思いますけど。
堀江 今後、PWR(加圧水型発電用原子炉)とか次世代の炉のアイデアとか、実際に動くものも出てきているわけですよね。
大前 いま世界で売れているのは、「AP1000」というタイプです。これからの原子炉は世界中で福島をとことん研究していますから、きっといいものができていくはず。日本に置くなら、あれをほしいなっていうのもありますね。
堀江 設置できないんですか?
大前 今の日本じゃ難しいでしょう。国民が国を信用していないから、ノーと言っていますしね。
堀江 うーん。でも、国民が原子力に反対しているのは、国を信用していないっていうよりは、原子力がよくわかっていないからっていうところのほうが大きいと思うんですよね。
大前 おっしゃるとおり。私は、優れたスポークスマンが誰か1人いればいいと思います。その人がほかのことにおいても、とにかく信頼性を得ているといい。そして、その人が詳しく調べてみた結果、自分はこう考えるということを言えれば、多くの人は理解すると思うんですよね。
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この連載について
本気のテクノロジーが世界を変える——大前研一×堀江貴文 対談
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