アジア各地の部品メーカーが
虎視眈々
「アップルは必ず、テレビのようなディスプレイ商品を出しますよ」
9月中旬、台湾の首都・台北市中心部にある洒落たカフェで、小ぎれいなシャツをまとった男性が本誌記者にそう言い放った。
この男性の職業はアナリスト。アップル製品のサプライチェーンの専門家で、「鴻海精密工業はすでに、アップルが計画しているテレビ用の5.7インチの液晶付きリモコンを試作しています」としっかり語った。鴻海とは、アップルのiPhoneの生産を引き受けている台湾の大手EMS(電子機器受託生産サービス)企業だ。
このアナリストは昨年秋、企業向けに配信しているレポートで、アップルがより小さなタブレット型端末、通称「iPad mini」の発売を計画していると予測。当時は英語メディアでも一切報じられていない内容だったため、現地では「世界で初めてiPad miniをスクープした男」として、ちょっとした有名人になっていた。
「断言はできないけれど、テレビもそんなに遠くないと思うよ」。男性は笑いながらうなずいた。
アップルの未発表の製品については謎につつまれている。
にもかかわらず、インターネット上の掲示板のみならず、新聞社やテレビ、そして実際のビジネスの現場でも無数の情報やうわさが飛び交っている。
ブログなどでは、思わず噴き出してしまいそうな珍妙なモックアップ(模型)も多いが、「ついクリックして見てしまう」(部品メーカー社員)。それというのも、いざ発売されたら、大きな経済圏となってビジネスを生むからだ。
本誌も独自取材の中で、アップルの“未来の製品”の片鱗を見ることができた。