加藤 でも、そうやってあたらしい仕事を考えていくのは、むずかしいことですけど、おもしろいですよね。
糸井 まさに。面倒くさいんだけど、やったことのないことのなかに未来が入ってるので。その未来はたぶん、「ここではもうなんにも育てらんないよ」という畑とか、石ころだらけのような場所で、ちょっと石ころをどかしたら桜の花が咲きました、みたいなことが多いんじゃないかな。
加藤 ああ、いい言葉ですね。「やったことのないことのなかに未来が入ってる」。
糸井 だから、インターネットというのはひとつの土壌でしたよね?
加藤 はい。
糸井 でも、その土壌の下には「ものを知りたい」とか「つながりたい」というひとがたくさんいた、っていうのが、ほんとうの土壌でしたよね?
加藤 ええ。ひとの気持ちをうまくつなげることができるのが、インターネットですよね。
糸井 そういう接ぎ木みたいにしてできていくものに、いまはやっぱり興味があるんです。
加藤 はいはい。
糸井 たとえば今年、東北という土地に楽天って花が咲きましたよ。
加藤 はい。
糸井 あれも楽天球団が、経営的にやっていくって努力をしたことで、捨てられないチームができましたよね。
加藤 そうですね。
糸井 「立命館アジア太平洋大学」といって、大分の別府に国際大学があるんですけど。ぼくがいま、そこで研究をやってる人たちとのお友達関係を一所懸命やってるのも、ひとつの実験というか。別府という、ひとつの温泉街に、アジアの人たちがたくさん集まってくるわけです。そこでいま咲きつつある花と実が、なーんかね、未来を感じさせるんですよ。「うちもそこからひとを採用しようかな?」とか、そこの職員の方々がやってる方法をぼくらも教えてもらうし、こちらから伝えられることは伝えるし、というような。あるいは東北のお仕事を一緒にやったり。
加藤 なるほど。
糸井 これもね、アテはないんです。ほぼ日をはじめたときだって、「アテはありましたか?」と聞かれたら、「んーっ、なかった!」というほかない(笑)。
加藤 いや、あたらしい仕事にアテはないですよね。ぼくもこんなこといったら投資家の方に怒られますけど、全然ないですよ、確かで計算できるようなアテなんて。頭だけで解ける問題なら先に誰かが解いてるというか、アテがあったらもう誰かやってますよね。
糸井 なにせ、cakesはあこがれの釣り師ですよ。バスボートでぐるぐる回って、それで何っ回もルアー投げている人のやり方ですよ。みんな疲れるからやんないですけど、cakesはそれやってますよ。うちにはもうなくなったエネルギーです。それは、ほんっとそう思います。
糸井 はい、なんでも。
加藤 ちょっとこれはもしかしたら失礼になるかもしれない質問なんですが。