都内の男性歯医者は勤務していた歯科診療所を退職した。「なぜ今の患者の歯を削らなかったんだ」「なぜ抜かなかったんだ」。院長から叱咤され続けてきた。
この歯医者の歯には、10年前からごく初期の虫歯が数本ある。削らずに手入れを心がけることで進行を止め、歯を守ってきた。患者にもできるだけ削らない選択肢を与えることが、彼のスタンスだった。しかし、削ったり、抜いたりしなければ診療報酬にはつながらない。院長が求めるのは、金を生む歯医者だった。
2013年11月18日
負の連鎖が止まらない。歯医者過剰が歯科診療所経営の悪化を招き、激化する患者争奪がトラブルを引き起こす。トラブルが患者の不信を招き、市場を弱める。歯医者たちは泥船に乗ったまま沈んでいくのか──。
都内の男性歯医者は勤務していた歯科診療所を退職した。「なぜ今の患者の歯を削らなかったんだ」「なぜ抜かなかったんだ」。院長から叱咤され続けてきた。
この歯医者の歯には、10年前からごく初期の虫歯が数本ある。削らずに手入れを心がけることで進行を止め、歯を守ってきた。患者にもできるだけ削らない選択肢を与えることが、彼のスタンスだった。しかし、削ったり、抜いたりしなければ診療報酬にはつながらない。院長が求めるのは、金を生む歯医者だった。
歯医者数が10万人を突破した。明らかな供給過剰であるため患者争奪は激化している。技術も知識もないまま新しい治療法に手を出したり、過度なもうけ主義に走る者も存在する。だまされずに、いい歯医者と治療法へたどり着けるよう、歯医者と業界の見え...もっと読む