ここではないどこかに旅立ち、しばし存分に遊び、また帰ってくる。映画、小説、絵画、音楽、どんなジャンルであれ作品とは、そういう楽しみを手軽に体験させてくれるものですよね。現在の日本というくくりとは少し違った、ここではないどこかへ旅立つために、今回は東京・竹橋の東京国立近代美術館にまいりましょう。開催されているのは、「ジョゼフ・クーデルカ展」です。
クーデルカは1938年、チェコスロバキア生まれの写真家です。一般的には、あまり聞き慣れない名前でしょうか。でも、現存する写真家のなかでは、その動向が世界的に注目されるひとり。大規模な個展が日本で観られるというのは、なかなか稀有でうれしいことなのです。
1960年代から現在に至るまで、ずっと第一線で写真を撮り、発表してきたのがクーデルカです。今展では、ほぼ時系列に作品が並べられています。こうした展示形式ですと、20世紀から21世紀にかけての時代を生きた人間が、どんな事物に関心を持ち、何を目にしてきたかがわかるのがおもしろいですね。通して見れば、時代の雰囲気というものがくっきり浮かび上がってくる気がいたします。