まずはこのアルバムジャケットを見てほしい。
作曲家・都筑清太郎のファーストアルバム『続き/TSUZUKI SEITARO』。全曲、いたってシンプルなピアノ曲だ。どこかもの悲しいけれど、聴いているとときに陽だまりのような情景がありありと浮かんできて、ほのかな幸福感も漂う。
音を聴きながらジャケットに目を落とすと、そこにはインパクトのある女性のポートレートが載っている。スタイリッシュでカッコいいけれど、セットアップし過ぎた人工感はなく自然体で和んだ空気も感じられる。
だれが、どのようにして撮ったのか。俄然興味が湧いてくる。クレジットを見れば、撮影者は服部恭平とある。気鋭のフォトグラファーである。 いまの時代を象徴するような「美しさ」をつくり出すこの表現者に、ぜひ聴いてみたい。作品のインスピレーションはどこからくるのか? なぜ写真に魅せられているのか。表現を人と分かち合うって、どんな意味があるのかを。
『続き/TSUZUKI SEITARO』のアルバムジャケット写真は、音楽内容との相性も含めて、大胆で意外性のあるものに仕上がっていますね。どういう経緯で写真を担当するに至ったのでしょう?
「都筑さんのお父さんで作曲家・プロデューサーのTSUZUKI TAKASHIさんとはもともと知り合いでして。息子がアルバムをリリースするのでジャケット写真をお願いできないか、とお話をいただいたんです。シンプルで優しいピアノの音と、僕の写真のテンションが合うんじゃないかと思ってくださったようで」
採用された写真は、撮り下ろしたものですか?
「はい、被写体から仕上がりまですべて任せてもらったので、ふだんの僕の撮り方そのままでやらせていただきました。僕が思う写真のおもしろさとは、被写体と対面して時間を過ごしたという行動の記録が、そのまま残るところ。今回採用してもらった写真も、ある日あるところでこの女性と僕がカメラを介して向かい合った、ただそれだけが伝わるものになっているし、それでいいんだと思っています。何の注文もつけずにそのまま使っていただけたのは、うれしいかぎりですね」
収録曲の雰囲気や内容に合わせようという気持ちは、あったのかどうか。
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