結婚出産前提じゃない人生にしたいのに

今回、牧村さんのもとには、周囲の結婚や出産を前提とする人生観にもやもやしているという方からのおたよりが届きました。「知ろうとして調べても、その言葉に縛られていくような気がして、自分の気持ちをどこに置けば良いか分からなくなる。」そう悩む相談者さんと一緒に、言葉との向き合い方を考えていきます。


※牧村さんに聞いてみたいことやこの連載に対する感想がある方は、応募フォームを通じてお送りください! HN・匿名でもかまいません。/バナー写真撮影:田中舞 スタイリング:宮寺理美 ヘアメイク:世界のホリエ

誰かの決めた幸せへ追い立てられる人生じゃなく、もっと自由に歩くためにはどうしたらいいんだろう。

というコンセプトで2014年からお送りしております、ブックガイドつき人生相談『ハッピーエンドに殺されない』。

今回は、「考えるために知りたくて、新しい言葉を探すんだけど、その行為そのものが『自分はちゃんと考えてるんだ!』っていうフリのためみたいな気がするし、新しい言葉にも縛られてしまうような気がするし、ぜんぜん自由を味わえてないな」っていうご相談です。

スマホで自分の悩みを検索すると、出てくるのは、誰かの言葉なんですよね。

誰かが作った言葉を手にして、自分は、誰に何を言うのか。
誰かが作った言葉を道具に、自分の道を、どうひらくのか。

お便りをご紹介します。

牧村さん、こんにちは。

私は自分の性や、周りの結婚出産を前提とする人生観が自分にはどうしてもしっくり来ず、かといって自分がどうしたいのかも分かりません。そんなときに牧村さんの連載に出会い、今では少しずつ自分を理解出来てきている気がします。

ですが、この自分のもやもやを解決するために「知る」「勉強する」(この表現が正しいのか分かりませんが)ことに苦痛を感じてしまうことがあります。社会的な正しさや義務(「自分はちゃんと考えてる!」のようなもの)のためにやっている自分を感じて、嫌悪感を抱いてしまうからです。また、知ろうとしてもその言葉に縛られていくような気持ちになり、自分の気持ちをどこに置けば良いか分からなくなります。

上手くこの気持ちと向き合って、自分のために「知って」いくにはどうすれば良いのでしょうか?
(ご投稿を全文拝読の上、一部編集して掲載しました)


おたよりありがとうございます。一緒に考えましょう。

少し前に、「“言語化してくれてありがとう”と言うのが流行っている」みたいな話題がTwitterで流れていたのをまず思い出しました。

いまって2022年ですけど、人類史上最高に書き言葉のやりとりが多い時代だと思うんですよね。しかも、手書きではない文字で。

手書きの文字って、言葉以外の情報が乗りますよね。
急いで書いたのか、丁寧に書いたのか。
流れるように書いたのか、何度も消しては書き直したのか。

紙にも匂いや手触りがあるし、インクや文具をどう選ぶかというところも言葉以外の情報になる。「手漉きの和紙に庭で育てた花の押し花を漉き込んで墨をすって筆文字で書きました」っていうのと、「油が染みたチラシの裏にインク切れ切れの使い古しボールペンで走り書きしました」っていうのでは、まったく同じ文章が書いてあっても、伝わるものが違うでしょう。

ところが手書きではない文字だと……いまあなたがご覧になっているこの、画面上の電子情報の文字だと、なんていうんでしょうね。なんか、なんとなく「おんなじ感じ」に見せるというか、均質化する作用が働く。

たとえば10000人が、そうだな、「#選択的夫婦別姓」ってハッシュタグで発信したとするでしょう。みんなそれぞれの言葉遣いで、それぞれのアイコンで、名前で、書いているんですけど、なんだろう、なんか「それが全部手書きだった場合」を想像してみて、比べてみると、どうですか? 伝わってくるものが違いませんか。単純に「手書きの方が情報量が多い」みたいな話ではない気がするんですよ。もっとこう、結束感みたいなものが強まる、というか。あ、「読んでいるときに頭の中で全部同じ声で聞こえる」と言ったらいいかな。人間それぞれの生の声をきれいにならして整理する作用が強まる感じがするんですよね。

おたよりくださった方は、こちらのインターネット人生相談に出会ってくださったということなので、もしかして、けっこう、思うことやご自分のお悩みをスマホで検索なさることが多いのではありませんか?

そうすると、やっぱり……おたよりの表現をお借りします。「知ろうとするとその言葉に縛られていくような気持ち」に、なりがちですよね、きっと。人間がデジタルな書き言葉ではなく、生の声で、表情で、肉体で、手書きの文字で、議論を交わしていた時代と比べて、今はやっぱり「言葉によって均質化されて整理される感じ」が強まっていると思うんです。

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この連載について

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ハッピーエンドに殺されない

牧村朝子

性のことは、人生のこと。フランスでの国際同性結婚や、アメリカでのLGBTsコミュニティ取材などを経て、愛と性のことについて書き続ける文筆家の牧村朝子さんが、cakes読者のみなさんからの投稿に答えます。2014年から、200件を超える...もっと読む

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makimuuuuuu 世の「ふつう」に合わせたくなかったり合わせられなかったりすると、「私勉強してるから!ちゃんと考えてるから!」ってするための勉強が始まっちゃって逆に息苦しくなる現象の話です https://t.co/fm0bPXg34f https://t.co/kvwEOmC2oJ 3ヶ月前 replyretweetfavorite