借りパク奇譚

最終回】彼女が一番伝えたかったこと #23

【前回までのあらすじ】これまでの「借りパク」を懺悔するために寺に集まった男女4人。最後の儀式で主人公・竹中は、寺の住職・亮潤から信じがたい話を聞く。混乱しながら部屋を出るとクロエに呼び止められ、すべては偶然ではなかったと知る。驚く竹中をよそに、クロエに「もう一つ言えなかったことがある」と告げられーー。宮藤宙太郎さんによる「借りパク奇譚」、最終回です。

おれはうなずき、覚悟して、彼女の次の言葉を待つ。おそらく今から言おうとしていることが、彼女が一番伝えたいことなのだ。

「先程、『智慧の儀』の時に伏せた私のバイトの内容、カンバルさんの話を聞いた直後だったので、どうしても言えなかったんです……」

「……なるほど」

「話そうか随分迷ったのですが、やはり竹中さんにはお伝えしておいたほうが良いかと……」

「ええ、大丈夫です。話してください」

どんな内容でも受け止める。今一度自分に言い聞かせて、おれはそう言った。ただ、それでも彼女は話をしばらくためらって、しばらく間を置いてから、ようやく口を開いた。

「……私がしていたバイトは……『地下街の人びと』の担当者に同伴し、クライアントの方と一緒に、 "音楽のコンサートに行く" というものでした。私はただ、機嫌よく、その場所にいるだけで良かったんです。バイトの内容はそれだけ、本当にそれだけでした。バイトを通して私は、大勢のクライアントの方と、色々な種類のコンサートに行きました。つまり……私の場合は "コンサート" が専門だったという事です。私の知人はそれが "ゴルフ" であり、他の人の中には……一緒に "スポーツ観戦" に行くという人もいたようでした」

おれは沈黙した。黙ろうと思ったわけじゃない。ただ、頭を整理するに時間が必要だった。 "クライアントとスポーツ観戦"。いやでも山田の話を思い出す。つまり山田のフィアンセは、夏目さんと同じバイトをしていたということなのか? やはり……山田のフィアンセは、山田にとっての『鍵』だったのか? 物語の断片が少しずつ集まって、全体のアークがぼんやりと浮き上がりつつあった。胸がチクチクと痛んだ。亮潤様は、このことを山田に話すんだろうか?

「なんとも胸くそわるい話ですね」

おれはつい本音を口にした。

「はい……ごめんなさい」

「す、すみません。夏目さんが謝ることではないです」

「ええ、でも」

「……このことは亮潤様には?」

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この連載について

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借りパク奇譚

宮藤宙太郎

この世にはびこる「借りパク」。それを懺悔し、みそぎができる寺があったら…? 今まで散々借りパクしてきたという悪友に巻き込まれる形で、みそぎに参加することになった主人公・竹中。そこに新たな2人の男女も加わり、奇妙な形で儀式が進んでいく。...もっと読む

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